物語#4

 少女は毎日、本を読んでいた。ジャンルは問わず、新書や小説、漫画などあらゆる文化作品をたしなんでいた。


 部屋には無数の本が立ち並び、本棚では収まらないほど数。その中で平然としている。いつもの日常のようだ。


「また……なんで主人公ばかりハッピーなんだろ?」


 持っていた本を閉じ、唯一散らかった山へ投げ捨てた。そして一番取りやすい本を取り、一ページからまた読む。しかし予定が狂った。


 少女の家へ誰かがノックもなくドアを開けたのだ。扉の先へいたのはある女性。鮮やかな赤い髪と黒い目を持っている。


「どうしたの?珍しい」


 赤髪の女性は黙ったまま、うつむいたまま、座った少女へ近づいた。少女は警戒することなく、ただじっと到着するのを待った。


「殺して…………」


 かすれた声か、絞り切った声か、どちらにせよ聞こえづらい声だった。


「気分になったら殺害するって言ったはずだけど」

「もういいの………もう疲れた………………」

「話なら聞くよ。苦手だけど」


 少女は話が苦手なようだ。実際、文章から目を一度も離していない。


「仕事なんでしょ?……やってよ…………」


 少女は音が鳴るように本を閉じた。投げることはなく、近くにあった本製の机へ乗っける。


「いいよ、殺してあげる。だけど条件がある」

「―――――――なに?」

「脱走当日について教えて。17って、生きてるの?」

「17………冗談じゃなかったんだ…………」

「まぁとにかく座ってよ。不快だから」


 少女が赤髪の女性の肩を掴み、無理やり押して椅子へ座らした。妙なことに、その両者の椅子は新品であった。


「じゃ、早速だけど、17って逃げれたの?」

「――――――たぶん、死んでる。あいつだけ見えなかったから」

「それ以外は知らないの?」

「前に言った特徴とこれぐらい。本当に何も知らない。だって一緒に逃亡していないから………そうなの…………………私たちは置いてったの!」


 赤髪の女性が壊れた。少女はあからさまに嫌な顔で立ち上がり、彼女の頭を掴んだ。


「はいはい殺すから。静かにして」

「――――――――神はおられますか?」


 黒いまなざしで少女を見た。そして死んだ。突然、人形になったかのようだった。血などは一切出ていない。もう一度触れると死体は瞬時に消えた。


 少女は椅子へ座って本の続きを開いた。しかし読んではいない。何かを考えているようだった。


「神様…………定義が分からん」

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