物語#2

「いらっしゃ……」


 白髪の少女がある街のパン屋へ入店した。直後、店員である女性の全身が淡く赤らめたが、少女が転瞬の間に距離を詰めて喉元を掴んだ。


「ガハッ」

 勢いよく地面へ倒れ、大きな音を立てた。


「16番、抵抗しないで」

「はぁ――はぁ――」

「私は19。話をしにきたの」

「はぁ――話?今更?」


 淡く赤らめた全身が静かになった。女性は鮮やかな赤い髪と黒い目を持っている。


「ふざけないで!全員殺したくせに!」

「17は生きてるよ」

「―――――馬鹿にしてるの?」

「そんなことはどうでもいいの。質問に答えて」


 赤髮の女性は視線をそらした。しかし、少女は会話を容赦なく続ける。


「人を殺したことってある?」

「なにその質問……」


 相変わらず目は合わそうとはしない。


「答えて」

「グッ」


 爪を立てて首をさらに絞めたが、すぐさま力を緩めた。その結果、吉川線のできる原因となってしまった。


「離して!」

「やだ。答えて」

「―――――なんでそんなこと聞くの?」

「なんで?16を殺すときは、殺したいって思ったら殺すことにしてるの。だから、16が誰か殺してたら、何か参考になるんじゃないかなって」

「――――――――――意味が分かんない」

「で、あるの?」

「ない。あるわけないじゃん」

「そっか」


 少女は指を離した。女性の首には、小さな指のあとがくっきりと残っている。


「え?殺しに来たんじゃないの?」

「なわけないじゃん。さっきも言ったけど、殺したいと思ったら殺すから。あー、あと、どこに逃げても無駄だよ。もう覚えたから」


 少女は何事もなかったかのように店を出た。


「―――――なんなの?」

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