奴隷17

上白糖 赤飯

物語#1

「はい、これで15人目」


 蠟燭の灯る家屋の中で、赤い液体の滴る麻袋を投げ出した。ゴロゴロと音を立てて、ある人物の足へとたどり着く。

 白い髪が月夜に照らされて反射していた。その人物は女性だった。麻袋を拾い上げ、鉄板の上へ置いた。紐を解き、中身が出る。


「15番。悪魔の使い・サタナス。うん、間違いないわね」


 中身は女の生首。艶やかな黒髪、今にも喋りそうな唇、先程まで生きていたように感じる。


「ん?爪まで入ってるじゃない」


 水色で染まった爪があった。合計で十枚。指の爪と思われる。


「変な色の爪だったから剝がしてきちゃった。あ、あと一応だけど、背中は15って書いてあったよ」


 白いワンピースを着た少女は近くにあった椅子へ飛び乗った。足をばたつかせて暇そうにしている。


「そっか、ならしょうがないわね。さ、体を洗いましょう?あなた、少し血生臭いわ」


 二人は浴室へ向かった。少女が手を挙げ、女性はワンピースを取る。


「これであとは16と17。16はこの街のパン屋を営んでる、赤毛の女。17は依然ね」

「なんで見つかんないだろ?もう死んでたり?」

「星を喰らった人は死なない。あなたもそうでしょ?奴隷19番?」


 少女の背中には19と描かれた歪な入れ墨があった。そして体中には大きな傷跡が刻まれている。まるで戦士のような体だ。


「でも、星喰いは星喰いを殺せるでしょ?」

「そうね、能力を使えば殺せる。だけど、17は最強だから。現実的じゃないわね。陛下は見つけるだけでもいいって言ってたし」

「そんなに強いんだ」

「強いよ。私の左腕を奪ったのは彼女だもの」


 血で真っ赤に汚れていた肌や髪を水でとかすと、透き通るような白い肌、本当に真っ白な髪が現れた。しかし、目は全てを包み込むような黒い色をしている。


 体や髪を乾かして、また白いワンピースを着た。そして家を出ようとした。


「もう行くの?」

「寝れないんだもん。暇だし殺しに行く」

「十日連続で15人も殺して、まだ記録を伸ばす気?ジャック・ザ・リッパーの再来だなんて、巷では騒がれてるのよ?」

めて欲しいなら止めるよ。暇なだけだし」


 少女は扉を閉めた。そこから動こうとはしない。返事を待っていた。


「うーん、そうねぇ。殺したいの?」

「いや、さっきも言ったけど暇だから」

「じゃあこうしましょう。殺したいと思ったら殺す。それまではお休み。いいわね?」

「殺したい……分かった。殺したいと思ったら直ちに殺す」

「物騒ね」


 それから女性は寝た。少女は月と夜を眺めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る