4. 糸引くキス(ただし納豆)


 先日、朝ごはんの時のこと。


 私が先に食べ終わり片付けやら出勤準備やらをしている中、マベちゃんはまだマイペースに食べています。

 その日の献立は、ご飯に納豆、温泉卵、ミニトマト、プラスみかん。


 私が窓を閉めようと窓辺に行くと、足元にあるごみ箱周辺に、黒くて細長い小さい何かががたくさん! 

(ひぃ~~‼)

 一瞬くっつき虫のセンダングサの種かと思い、おののく私。

 大っ嫌いなんですよ、このくっつき虫!


 でもよく見ると、消しゴムのカス。


(こりゃ~マベちゃんの仕業だな!)

 多分、ゴミ箱に入れようとした消しゴムのカスがちゃんと入らなくて、横に落ちたのでしょう。


 そう思い、ちょうど食べ終わってもぐもぐしているマベちゃんに言いました。


「ちょっと、これ見て!」

 腰に手を当て、消しゴムのカスを指さす私。

「どう思う?」


 もぐもぐ中のマベちゃん、ゆっくりと立ち上がり、そして――


 ――なんと、私にキスしたではありませんか‼

 納豆のねばねばが残るみかんの香りのキッスを、私の唇にチュッと‼

 テヘッといった感じに、はにかむ笑顔がとっても可愛い‼


 うんっ、普段から口に物が入ってる時はあまり話さないように言ってるもんね。

 守れて偉い! 

 それに、何も言わなかったらお母さん怒るもんね。よく分かってる‼

 いずれにせよ、お母さんこれから怒るよって感じだもんね。よく分かってる‼


 それを一気に解決する方法、それがキス‼


(この子は人心掌握の天才ではなかろうか⁉)

 キスがちょっと嬉しく、怒る気持ちがプシューッと抜けていった私。


 もぐもぐが終わったマベちゃん、小首を傾げ「ごめんね」といいます。


「うん、次からは気を付けてね」

 毒気を抜かれてにこやかに言う私。


 心の中は(マベちゃんなんて可愛いんだ!)でいっぱいです。


 はい、やっぱり私は親ばかです。 

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