第17話 道路を整備してみる

「ほーい、みんな並んでー」


今日も今日とてジュドーとアラゴは子供達を集めてた。

子供達は皆、手シャベルを持っている。


「なあ…俺達を集めて今度は何をするつもりだよ?」


村の子供の1人が呆れたように呟く。ジュドーとアラゴが一緒になっておかしなことをし始めるのは慣れたものだが、如何せん説明がない。


「なーに、大したことじゃないさ。道を整備しようと思ってな」


「道を?」


「例えば今日集まってくれたこの道は雨が降ると泥濘んで手押し車が通るのも一苦労だろ?そこで水捌けの良い道を作ろうというわけさ」


今彼等がいる道はヴォーダン領の畑に通じる道のひとつだ。そこは雨が降ると泥濘んでしまうため、収穫期に雨が降ると農作物を運ぶのに何時も苦労をする区間でもある。

故に何度も整備されてきたが、改善したこともない。


「ジュドーの言いたいことはわかったけどよ。ここは何度も整備されてるが何も変わらないじゃないか」


村の子供の言うのは尤もだ。ただ、その整備の仕方は土を被せて平らに均す程度のものでしかない。


「だから道そのものを変えるんだよ」


「道そのものを変えるだって?ますますわからないぞ。アラゴ、どういうことだ?」


「俺に聞いてわかるわけがないだろ?ジュドーが帝都の学校で教わったことなんだから」


「学校で習ったわけじゃないけど、まあそこはどうでもいいか。それじゃ、小さい子達はシャベルを持って土を掘ってくれ。大柄の子達は川から小石を積んで持ってきてくれ」


子供達は新しい遊びのように地面を掘り進めていき、その土を麻袋に詰めて持てる程度の大きさの土嚢を作っていく。

ある程度掘り進めたら道を均してから木の板に棒を刺して固定した物の上に子供が乗ってぴょんぴょん跳ねる。簡易性のコンパクターだ。

コンパクターで固まり始めた頃、大きな子供達が棒に網を吊るし、中に砂利を詰め込んで続々と戻って来はじめた。


「よーし、それじゃ地面を固めるのは小さい子達に任せて、大きい子達は砂利を固めた地面の上に敷き詰めて均してくれ。他の子は用意してある麻袋に掘り出した土を入れて土嚢を作ってくれ」


コンパクターで土を固めたら、そこに今度は砂利を均等に敷き詰め、その上に用意された土嚢を敷き詰めるともう一度コンパクターで固め、更にその上に土を被せてコンパクターで固めて完成だ。


「なんか面倒くさいことするな。これって意味があるのか?」


訝しそう顔をするアラゴ。


「少しアレンジはしているけど、確かな方法さ。ほら、砂利を敷き詰めた分少し道が高くなっているだろ?更に横に水が通る道を作れば水捌けも良くなる」


「そういうものなのか。まあ、雨が降ったらわかるか…」


アラゴの問に答えるジュドー。ジュドーの頭の中には前世で息子の友人がODAでアフリカの道路舗装事業を行った話を思い出していた。

そこでは最新技術を用いた道路舗装は行わず、現地の人達が自分達で資材を調達し、自力でできるやり方を指導し実践した。

その話を聞いて最新技術を教えに行ったのではないかと疑問に思ったのだが、現地の人達がすぐにでも始められて継続できるようなやり方でないと意味がないという言葉に感銘を受けたことを思い出す。

新しい方法が正しいやり方ではないと感動すら覚えたのだ。

その舗装のやり方を真似をした形なのだが、アフリカでこの方法が有効であることは立証済みだ。

これなら子供達を集めても出来ないことはない。


ヴォーダン領に住むほとんどの大人達は農作業や森での狩猟に勤しむため、このようなことに時間を使えるのは子供達しかいない。その子供達が少しでも楽しめるような形で工夫を凝らしてみる。

そうすれば時間はかかるが、いつかはヴォーダン領の道という道が舗装されることだろう。

そんな遠くない未来をジュドーは思い描いていた。


それから数日後の事だ。

ヴォーダン領に大雨が降り注いだ。雨は恵みの雨だが、道が泥濘むことを考えるとあまり良い気分ではない。

また木の板を泥濘に置いてしのごうと雨が上がった日に板を持ってよく泥濘になる道に来てみると…

驚いたことに全く泥濘んでいなかった。寧ろ水が捌けて土が乾き始めている。


「なんだこりゃ…」


驚いて舗装された道を歩いてみても足を取られることがない。

このことはすぐにヴォーダン領全土に広まった。それをやり遂げたのが他でもない自分達の子供達であり、指揮を取ったのがジュドーであることはすぐに周知され、ジェリドの元には道の舗装を依頼がヴォーダン領中から舞い込んできたが、ジュドーから何も聞かされていないジェリドは何のことか全く理解出来なかったため、その夜にジュドーとアラゴから話を聞くことになる。

きっと幼年学校に通いながら、領の為に出来ることを調べてきたのだろう。領民達はそう噂をし始めた。

来年には高等学校への入学が決まっている。

次はどんなことを学んでくれるだろう?領民のジュドーへの期待は知らず知らずの内に高まっていった。


そして1年後。

ジュドーは高等学校へと入学する。








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第一章、完結となりました。

次回からは第二章の高等学校編スタートします。

応援ありがとうございます。大変励みになります。

この場をお借りして御礼申し上げます。


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