第1話ー③「みんな」

 翌日、体調がよくなったので、学校に行こうと決めたが、両親に止められた。今はゆっくり、休んでいいんだよと言われた。 


 テスト前だからこそ、私は平気と意地を張ったが、どうにも許してくれなかったが、私は意地でも学校に行きたかった。 


 その理由は、暁晴那とちゃんとケリをつけたかったからだ。そうすれば、私は強くなれる。そんな気がしたからだ。


 過保護な父親は、バンに乗せて貰っても尚、帰ってもいいんだよと再三言われたが、私の気持ちは堅かった。


 いつものように、何事も無かったように、教室に入るも、みんなは何も言わなかった。 


 「おはよー、羽月、佐野っち!」


 「・・・・・・」


 私は立ち向かうはずの敵に完全に折れてしまっていた。帰りたい。


 一時限目終わり


 「羽月、一緒にバスケしようぜ」


 「お断り致します」


 二時限目終わり


 「羽月、花占いしない?」


 「お断り致します」


 四時限目終わり


 「羽月、今度よく分かんないけど、コイバナしない?」


 「お断り致します」


 次の日


 ホームルーム後


 「羽月、将棋しない?」


 「お断り致しします」


 二時限目終わり


 「羽月、今度こそ、飯食べようぜ」


 「お断り致します」


 三時限目終わり


 「羽月さん、あたしと一緒に踊らない?」


 「お断り致します」


 四時限目終わり


 「羽月さん、お願いだから、私と一緒に・・・」


 「お断り致します」


 私は暁の言葉を全て断った。私はやっぱり、みんなに勝てなかった。 っていうか、あんた、大体やらないやつだろ!


5


 「羽月、勉強教えて!お願い!」


 「お断り致します」 


 テスト期間に入った初日。彼女の切実な声に私は断固として、拒否の態度を示した。


 「な ん で?」


 「私、人に教えるのが、嫌いなの。それに出来なくて、ああだこうだ言われるのが、面倒なの」


 「そんなこと言わないでよ、だって、あたしたち」


 「そういう友達の使い方する人間は、大体、友達ではなくて、パシリとか、ぞんざいな扱いする人って、統計が出てるの」


 「えっ、そうなの?」


 当然、嘘である。だが、勉強を教えるのは、面倒なのは、本当だ。


 それにどうして、そんなことしないといけないのか?そんな義理も人情も無いのだ。


 「大体、矢車さんに教えて貰ったら、いいでしょ?」


 「いや、天の指導はアレだから」


 「誰の指導がアレですの?」


 呼ばれるように、矢車さんが現れた。


 「指導は実りのある物、指導をする気がある方には、ちゃんと指導したいとは思っています。ですが、晴那は勉強に対しての集中力が無いから」


 「いや、よく分かんない用語ばっか、押し付けてくるんだもん」


 本気で指導する気が失せて来た。これが高校だったら、留年してるんじゃ?と考える程に。


 「とにかく、私は晴那に指導する時間があるなら、今度こそ、羽月さんを倒す為の勉強時間を手に入れたいですわ」


 「そうですか、頑張って下さい。それでは、本日の営業は終了しました。それでは、さようなら」


 私は荷物をまとめ、駆け出すように、一目散にその場を後にした。


 「羽月!」


 私のばか。何で、断るんだよ、ケリをつけると決めてたはずなのに、どうして、私は彼女の前だと素直になれないんだろう? 


 こんなに親しくしてくれる彼女の思いを無碍にするなんて。 


 一週間もの間、こんな私の為に言葉をぶつける彼女の折れない姿に私は自分を持て余していた 名前の知らないこの感情の答えを見出すことが出来なかった。

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