第1話ー④「みんな」

 「先輩、秀才様と付き合ってるって、本当ですか?」 


 「先輩、何で言ってくれないんですか?」


 「ただの友達だよ。其れ以上でも以下でもない。そんな根も葉もない噂を信じる人だった?」


 部室に入って来ると後輩からの言葉が、どうにも棘があった。 そうですよね、すいませんという言ってはくれたが、きっと信じちゃいないだろう。  


 「何で、どいつもこいつも、付き合ってるって、言うんだろうな。馬鹿馬鹿しい」


 「それをいって、皆と同じ気持ちを共有することで、安心してるんだよ」


 「意味が分からん」


 朝は、とことん、こういうことに疎い。きっと、恋をしたら、変わるのかな?


 「そういうもんだよ」


 「全く、人気者は辛いねぇ、晴那っちょぉ」


 いきなり、現れる宝多先輩はいつものように、軽薄な入りだった。 


 「それで、その、えぇっと、誰だっけ?」


 「部活行っていいですか?」


 今日の私は機嫌が悪かった。 


 こういうのは、慣れてるつもりだった。けど、あたしよりも、羽月の方が心配だった。その煽り方が、モロに出てしまったようだ。


 あたしは先輩を睨みつけ、部室を後にした。


 「今のは、先輩が悪いです」


 「分かってる、すまん。あいつ、また失敗しないといいけど」


 あたしはやらかした。制服のまま、そのまま、外を飛び出したのだから。


 リュックは抱えていたけれど、今日部活を休むのは、気が引けた。 


 感覚は覚えてないといけない。いいかと思い、あたしはL○NEで今日は勉強すると朝に送り、図書室に向かった。


 図書室に行ってみると羽月と失神事件で春日と話していた若林の2人が、会話をしていた。 あたしは、静観しようとしていたが、謝罪の言葉が聴こえた。 


 先ほどの言葉に相反するように、あたしの体は勝手に動いていた。


 「謝らなくていいよ。本当に謝るなら、もう二度と羽月に近づくな。若林のしたことは、そういうことなんだよ。若林は良くても、羽月の心は戻らないんだよ」


 何で、こんな身勝手な言葉を発していたかと思うと自分でも、過保護なんだろうかと常々、自身の態度を猛省した。


 「ありがとう、暁。でも、いいの、もういいの。もう、謝らなくていいんだよ、だから、泣かないで。今度は負けないで、自分にも、みんなにも」


 羽月の言葉が、あたしには痛かった。羽月はあたしより、強かった。


 そう言える羽月のようになれないあたしは小さいのだろう。


 「羽月さん、うん!」  

 若林の表情は穏やかでとても晴れ晴れとしていた。


 「あなたたち?」


 その後、あたしと羽月は司書の先生に滅茶苦茶、叱られた。

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