陽光

紙の妖精さん

冬の朝、弥矢はいつものように早く起きた。まだ寝ぼけた目をこすりながら、カーテンをゆっくりと開ける。外には薄い霧が立ち込め、雪が静かに降り積もっている。しんとした冷たい空気が部屋に漂い、彼女の頬に触れる。窓から差し込む日の光が、雪の上でキラキラと反射し、まるで宝石のように輝いている。


弥矢はその光景に見とれながら、心の中に小さな安らぎを感じる。陽光が雪に照らされ、部屋の中に淡い光の斑点を作り出す。彼女は、冬の朝のこの柔らかな光が、自分にとっての一日の始まりを優しく告げているのを感じる。


ベッドから立ち上がり、窓際に近づくと、外の風景が一層鮮やかに広がって見えた。雪に覆われた木々が、雪の重さに耐えながらも静かに立ち、朝の光を受けてその枝を輝かせている。弥矢は、こうした静けさの中にある美しさに心を奪われる。


彼女は、そのままカーテンを引き寄せ、温かいパジャマの袖をまくりながら、しばらくその光景に見入っていた。冬の朝のこの瞬間が、彼女にとっての心の救いであり、一日の始まりにぴったりの安らぎをもたらしている。


外の静かな風景と部屋の温かさが、彼女の心を穏やかに包み込む。


弥矢は窓からの美しい雪景色に別れを告げると、パジャマの裾をそっとつまみ、着替えを始めるためにゆっくりと部屋の中央へ戻った。ふわふわのパジャマが彼女の体にやさしくまとわりついていたが、部屋の空気が少し冷えているのを感じて身震いしながら、ためらいがちに袖に指をかける。


まず、両腕をすっと袖から抜くと、冷たい空気が彼女の肌に触れて少しだけ体が引き締まる。その感覚は冬の朝ならではのもので、冷たさと心地よさが混ざり合い、彼女を目覚めさせる。パジャマを肩から滑り落とすようにして体から外すと、パジャマの柔らかな生地が足元に音もなく落ちた。


弥矢は、ベッドのそばに畳んで置いてあったグレーのセーターを手に取り、ゆっくりと腕を通す。厚手のニットが冷えた肌を包み込むと、瞬間的に暖かさが広がり、心までほぐれていくように感じる。セーターは柔らかく、彼女の肩にしっくりと馴染んで、袖口から手首がほんの少しだけ覗いている。弥矢はその感触に安らぎを感じながら、セーターを軽く引っ張って体に整えた。


次に、デニムのジーンズに手を伸ばす。少しひんやりとした感触が手に伝わり、彼女は小さく息を吐きながら足を通した。デニムの硬さが彼女の体にフィットするまで、彼女は少しずつ腰まで引き上げ、しっかりとボタンを留めていく。デニム特有のしっかりとした感触が、彼女の脚や腰を包み込むように馴染んでいき、準備が整っていく実感がさらに湧いてきた。


着替えを終えると、弥矢は肩にかかる髪をふわりと整え、もう一度窓際に目を向けた。外の雪は静かに降り続け、淡い冬の光が彼女のシルエットを柔らかく照らしている。冬の冷たさと温かな服のぬくもりが重なり合う中、彼女は一日の始まりに向けて、心を引き締めながらも穏やかな気持ちで立ち上がった。



朝の光が、彼女の内なる不安や緊張を少しずつ和らげていくのを感じながら、弥矢は一日を始める準備を整える。カーテンを閉じ、窓辺の光を心に留めながら、彼女は今日もまた、小さな幸せを見つける一日が始まるのだと実感する。

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