第4話 第3王子フィーオ
私とレナンの長期の仕事はキャルロット公爵家への私の養子縁組が済んでから無事、開始されることとなった。
それまではレナンと簡単な採集クエストや討伐クエストをこなしたり、時には執事長に泣きつかれて自由奔放ですぐ脱線するキャルロット公爵、いやお父さまのお仕事を手伝いに行ったりして過ごした。
そして、約束の日……。
キャルロット公爵邸で簡単なお仕事ワンピースを着つけてもらい、レナンと共に何故かキャルロット公爵家の馬車に乗せられ辿り着いた場所が……。
「ここって……」
昔は元婚約者のパートナーとしてよくパーティーなどに参加した。近年は王子妃教育を受けに毎日馬車で送り迎えしてもらったものだ。そう言えば婚約者ではなくなったし、更にはメローディナ公爵家を追い出されたのでもう王子妃教育もない。
あぁ、なんて晴れ晴れとした気分!
……と、思ったら何故、王城?
まさか、新手の詐欺……!?
いや、エリオットさんもお父さまもそんな方ではない。
では何故に?……と思ったその時だった。
「貴殿が、キャルロット公爵から紹介があったキャルロット公爵令嬢のキアラ・フォン・キャルロットとその従者のレナン・パンプディンか」
不機嫌そうな声の主は、金色の髪にダークグリーンの瞳をした端正な顔立ちの美青年だった。
かなりの長身ですらっとしているけれど、腕を見ると服の上からも鍛えてるってわかる。
彼は騎士?
「はい。キアラ・フォン・キャルロットと申します」
「レナン・パンプディンです」
そう挨拶すると……。
「私はジークと言う。早速だ。ついてこい」
そう唐突に告げられ、レナンと顔を見合わせながらもひとまずはジークさまについていくこととなった。確かジークさまって……公務の合間にちらりと見たことがあるが、国でも優秀な槍使いである。そして、第3王子に忠誠を誓っているはず。
たとえあのバカ王子がジークさまが欲しいと喚いても、見向きもしなかったとか。あのバカ王子、よく憤慨していたから覚えているわ。
……理由なんて簡単だろうに。
そして私たちが案内されたのは私が立ち入ったことのある王城の中央からはかなりかけ離れている。……と言うかここは離宮だ。
離宮で一体どんなお仕事を……?
首を傾げながらも案内された部屋に入れば、そこには美しい青年が座っていた。
その青年を、私は知っていた。
濃い紫色の髪はさらさらで切れ長で美しいエメラルドグリーンの瞳。肌は雪のように白く細身である。彼は黒のタートルネックにズボンと言うあまり見栄えはしないが暖かそうな服装に薄紫色のストールを羽織っている。
この方は……。
「知っているかもしれないが、俺はフィーオ・ヴィオル・ラディーシア。この国の第3王子だ」
そう、社交界にはほぼ顔を出さない第3王子殿下。私も王室名鑑くらいでしか見たことがない。
ジークさまだけなら代理で城の中央までいらっしゃることはあるが……第3王子殿下だけは、事情があり離宮に籠っていらっしゃる。
しかしそんな第3王子殿下が、私にどんなクエストを……?
「その、私はクエストを受けに来たんですよね……?」
まさか第3王子殿下の離宮に案内されるとは思っておらず、困惑する。
「そうだね。早速クエストの説明をしようか。まずは……キアラ、と呼んでもいいだろうか」
「は、はい」
第3王子殿下にそう言われれば、断わりづらい。ヴィクトリオに言われたのなら、今ならば容赦なく断るが。
「キアラ、君には俺の……」
侍女とか?いやいや、そんな。冒険者への依頼なんだから護衛とか?長期のお仕事だし、貴族の家の護衛なんてクエストもなくはない。後はその冒険者とお貴族さまとの相性次第。
合わないひとは合わないし、人脈を作るために敢えて受ける冒険者もいる。私は私で貴族育ちだから、相手がまともならば、報酬や条件次第で受けるわね。
「俺の……妃になってもらう」
……は?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます