拾ったホームレスは元英雄!?〜その英雄の名を誰も知らない〜

エイト

プロローグ

ジメジメとして薄暗く、ゴミや死体が散乱している道を一人の女が走っている。


「ハァハァ」

汚れのない、灼熱のような髪…身につけられた服は一般人に寄せているが一目見て上等な物だと分かる。そして、彼女は可憐であった。この場所に酷く似使わない人物だ。


「くっ…撒けたか!?」

後を振り向いた瞬間、スカートの裾を踏み、そのまま前に転倒する。


「のあ!」

ろくに整備されてない土の道だったせいもあるのだろう、服や顔は土に染まった。


「探せ!奴を逃がすな!」


後方から聞こえた声に反応し、急いで上体を起こしまた走り出そうとするが…


「イッッ…」

足から赤き血が流れ、彼女の白い肌をつたう。


「まったくアヤツはあれでドジな所があるからのぅ…」

それは長いスカートへの罵倒か、それともただ単にここに居ない第三者への愚痴か…あるいはその両方に思える。


彼女は、その長いスカートをちぎり怪我をした所に巻き付ける。


「居たぞ!あそこだ!」

顔を黒色の布で巻き付け、黒のマントを羽織った男が彼女を指差す。


男の手には、短剣が握られ、僅かに差し込んだ日により鈍く光っている。


「くっ…しつこいのぅ」

弾かれた様に彼女は走り出し、置き土産と言う様に立て掛けられてた木材を蹴る。


彼女の予想どうり、道を塞ぐように次々と木材がバランスを崩し倒れていく。


次の瞬間、破裂するような爆発音が鳴った。

先ほど蹴り倒した木材が粉々になり彼女の身体を襲

う。


「ガッ…!」

肩や足、数か所に粉々となった木材が刺さり、彼女は倒れる。


「ったく、手間かけさせやがって。」

もう彼女が走れないと見るや、悠々と歩いて彼女に近づく。


「ッ………!」

女は這いながらも逃げようと道を曲がる。

「なっ…!」

道は続かなかった、行き止まりだ。


行き止まりと見るや否や彼女は腰から剣を取り出す。ただ剣縁が、鈍い。鋭さが無いのだ。


「はっ!そんな玩具で勝つつもりか?」

「分からんか?お主如きこれくらいで十分だと言う事じゃよ」


ハッタリだ、現に彼女は手が震えている。


「煩わしい口だな、まぁいい…その方が燃える」

ペロリと舌舐めずりし、嫌らしい笑みを浮かべる。


察するにその思考は、後だろうが先だろうがこの女はどっちにしろ捕らえるのだから、今少し頂いても良いだろうという所だろう。


「じゃかましい、さっさとこんか。ははぁ?、さてはお主ビビったのかのぉ?」

獣のような下劣で、野性的な視線に晒される。今気付いたが、先程の爆発の影響で身に包んだ服が破れている。


彼女もそれに気付いたようで身をよじりながら、膨らみを隠くす。

フラフラと壁に手を付きながら、手を前にかざす。

ファイヤー火の…」

「させっかよ!ウィンドダッシュ風斬走り!」


速い…並の男では無い、よく訓練された軍人のようだ。

「グフッ」


彼女は腹を殴られた、そのままボールのように飛び、行き止まりの壁へとぶつかる。


「まっ…たく…軽食で…済ませておいて…正解じゃった…のぉ…」

頭を打ち付けたせいか力が入らないようだ、腹を押さえ土下座のような格好になり、男を見上げる。

「無様だなぁ、帝国の姫とあろうお方が!」


刻々と猶予は迫ってくる、だか…

(魔力マナも無ければ、剣を振るう力も無い…最早私はこれまでか…)

策は尽き、力は絶えた。


「暴れられると面倒だ、仕方ねぇ…あまり傷物にしたく無ぇが、筋を何本か切るか」

剣で肩をトントンと小突き、悠々と勝者の優越に浸りながら迫る。


(皆…すまぬ)

男が剣を振りかぶる


彼女は目を閉じ、静かに運命を受け入れようとした。頬に流れた一筋の涙が、ポトリと地に落ちた瞬間だ。


光が走った。


鈍い音が鳴った。


「助太刀しよう」

珍しい黒の髪に鋭い眼光、マントはボロボロで所々に穴が空いている。髪は無造作に伸び、服は元の模様も分からない。


瞳は死んだ魚のように、朧けな黒色をしている。


だが…


だが、その剣技が、その歪な湾曲した剣が

彼女の赤き瞳を奪い去った。

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