第169話 龍族
馬車の中で話を聞くとツノを生やした人たちは龍人族という種族で大昔に龍と人が交わって生まれた種族で、龍の力を受け継いでいるために力や運動能力が人族と比べると格段に高いらしい。
確かに筋骨隆々ってこういう人たちのことを言うんだろうなって思うようなガッチリした体つきでギルドマスターたちもこうだったが、彼らより一回り大きくもっとガッチリしている。正直、上からドカンと殴られたらぺしゃんこにされそうな気さえするほどだ。
そんなどうでも良いことを思いながら馬車に乗せられて王宮の門をくぐって王城に入ったが、王城も俺が知り得るどの城よりもサイズが大きかった。いったいどんな技術でこんな城建てたんだ?と考えていたらアンバーから『ルイなら土魔法でこれくらい作れるよ』と念話が来た。
あ、そうなんだ。もしかしたら昔の龍族が土魔法で作ったのかも知れないな。
それにしても、門をくぐってから入り口まで20分は馬車で揺られてるんだけどまだ着かないってどんだけサイズ感が違うんだよ。
……結局門から入り口まで馬車で30分ほど走ってたどり着くという驚きの広さだった。
龍人族の衛兵に案内されて応接室らしき所で更に1時間ほど待たされてやっと王と謁見するからと移動を促されたが、やっぱり王城内のバカみたいにだだっ広い廊下を歩かされて謁見の間に通された。
移動中に龍人にマナーを知らないのだが大丈夫か?と聞くと、龍族はマナーにうるさくないから大丈夫だと思うが、最初に片膝で跪いて頭を下げて声を掛けられるのを待てばよいと教えてくれた。こいつら皆親切なんだよなと。
謁見の間に通されると左右に数人の龍人族だろうか?ツノを生やした人が立って正面にはハイバックのイスが準備されている。
所定の位置に案内されて教えられたとおりに片膝で跪いて頭を下げて待ち構えた。
『ノア王様御出座』
後ろのほうから声が発せられ、前方右側から気配が動いた。
カツカツと歩き、イスに座る衣擦れの音が聞こえた。
『人族よ我が龍族の子供を保護してもらい感謝する。顔を上げて少し話しを聞かせてくれ』
俺が顔を上げると正面には少し長めの白髪で切れ長の目と理知的な顔をした40歳くらいで威厳の備わった男が俺を見定めるように見つめながら言葉を紡いでいた。俺は自己紹介とこれまでの経緯を簡単に伝えた。
『迷子になった子地龍をここまで案内して、人族との争いを避けてくれたこと、改めて感謝して褒美を取らせたいと思う。何か望みはあるか?』
何か望みがあるかと突然言われても……
すぐには思い浮かばないので後日改めて望みを伝えても良いかを尋ねると快く承諾をされ、王様から個人的に少し聞きたいことがあるので式典が終わったら面談を望むと言われてから式典を終えることとなった。
式典後に案内された応接室で待っていると先ほど会った王様が別な龍人を連れて入室してきた。よく見ると王様以外もさっきの式典で左右に居た人たちだった。
立ち上がって改めて挨拶をした。
「先ほどはありがとうございました。冒険者のルイと言います。」
『余は光龍のノアだ。こちらこそ礼を言う。子地龍を助け、争いも避けて貰ってありがとう。』
『私は闇龍のノワールだ。』
『私は水龍のファティマです。』
『私は炎龍のフレイザーだ。』
『私は地龍のチャックです。』
『さて、個人的に聞きたいと思ったことが2つある。1つは何故龍族語がわかるのか?もう1つはルイ君の魔力量のことだ。』
「え~っと……困りました。正直に答えて良いものか。」
『答えにくいのは神が許可を出さないからかね?』
「いいえ。口止めはされていませんが事象を信じてもらえる自信が無かったからです。その様子だと理解される感じがするので話します。」
俺は異世界からの転生者で神から転生時に全言語理解を貰ったことと、魔力量については他人と違う手順で魔力循環鍛錬をしたときに龍脈と偶然触れ合ってしまい、膨大な魔力量を得たことを教えた。それから俺も聞きたいことがあったので質問を試みた。
「俺からもお聞きしてよいでしょうか?」
『ここは式典じゃないから、普通に聞いてくれればいいぞ。』
王族なのに案外気楽に接してくれるな。
「龍族は人族との交流を絶っているのでしょうか?」
『何ゆえそのように考えた?』
龍大陸の南側、断崖絶壁を境にまともな交通手段では龍大陸に入れないこと、地続きのエスパネス王国の砦でも衛兵が戦争という単語をあっさり使っていたことを理由としてあげた。
『ふむ、中々聡いの。当たらずとも遠からずと言っておこうか。こちらから仕掛けるつもりは無いが人族は争いが好きであろう?人族の歴史は争いの歴史と言っても良いのではないか?積極的に交流を持てば争いを仕掛けてくる機会も増えよう?中央大陸では今も争っている地域があるだろう?』
「なるほど。返す言葉もありませんね。そうだ!先ほどの恩賞は個人として龍族と交流を持つ許可をもらえませんでしょうか?」
『ほぉ。これも何故?と聞いてもよいかの?』
「龍王国に入って石造りの建物や舗装などの文化に感動しまして、龍王国の文化を人族の規模で展開できないかと考えました。他にも食べ物など人族にない物があれば体験してみたいので。」
『ふむ、面白いことを考えるな。良かろう、許可するからルイに関してはいつでも龍王国の街に出入りするがいい。ノワール、許可証をこれへ持て。』
『ハッ!』
数分後にノワールさんが銀の指輪を持ってきた。
『ルイ殿、この指輪を右手の人差し指へ。』
受け取った指輪を言われたとおり右手の人差し指にはめる。
特に何も起きなかったが説明によると龍王国に入った時に王から許可された人であることが判り、簡単に言うと龍族特有の波動が判別できる指輪だそうだ。外して入国すると賊として排除対象になる可能性があるから絶対にはずさないよう注意を受けた。
『人族のしきたりや文化を我も知りたい。誰かをルイと共に行かせて情報を得ることはどうだの?』
ノア王が他の重鎮たちに問うと皆は微妙に視線を外した。
あれ?これ、ちょっと駄目なパターンじゃね?と予想しているとノワールさんが何かを吹っ切ったような表情でノア王へ耳打ちした。うむうむと頷きながら俺をチラッと見た。
背筋がちょっとゾワっとしたので碌でもないことを耳打ちしているに違いない。
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