嗅覚

 幻獣はどんな匂いがするものだろうと思っていたが、こいつ──ユニコーンはほぼ無臭だ。


 わたしは眼鏡を外すと、妻が淹れてくれたコーヒーの香りを何度も吸い込んで、その後、ユニコーンの体にも鼻先をつけて確認する。


「森とか草原の匂いがしない?」と妻は訊くが、こいつはそもそもそういうところで飼われていたものなのか。


 森や草原の匂いというのもわたしはよく知らない。


 

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