第3話 その幼女、猪突猛進につき危険


「それで、どんなイメージの魔法なんだ?」


「あらかじめ砂埃を発動させて置いて、守りが必要な場所にきゅっと集める感じにしたいんですの。あと、ドラゴンの鱗のように身体に纏わせるのも捨てがたいですわね…」


「……。」


私の腹心でメイドのチェルシーがルイーズ専用救護セット持ってきていた。流石、我が腹心わかっている。


「とりあえず、砂埃の方から試してみますわ。義兄さまは砂埃に模造剣を素振りの要領で振り下ろしてください」


訓練場に着き義兄さまと向き合う。私は砂嵐を発動し、


ーーーーそして義兄さまは砂嵐に飲み込まれた。


「あっ、いけない☆」


これはこれで殺傷能力がありそうである。要考案だ。

とりあえず魔法を解除して義兄さまを助け出す。救護セットの上級ポーションで回復させて、さあ、再チャレンジである。


「待ってくれ、私の精神面的に休息が欲しいのだが」

「何を言ってるのです?これから成功するまで何回も失敗するのに一回ごとに休息を入れていたら時間の無駄ですわ。あ、でももう砂嵐に巻き込ませる事は致しません。お恥ずかしながら少し張り切ってしまいました。不安ならもう少し距離をとって待っていてください。」

「毎度のことながらルイーズは私に恨みでもあるのかな!?」

「お姉さまとお姉さまのポフポフなおむねを奪われた恨みならありますわね」

「どこでそんな知識つけてくるんだ…」


私がそう言うと義兄さまは先程の3倍は距離をとった。失礼な。私は少し注意を払うと義兄さまとの間に砂嵐の壁を作る。やっぱり実際に発動すると問題点が見えてくる。


やっぱり砂嵐だと目につきますし、警戒されますわね。

かと言って薄くすると集めるのに時間がかかり本末転倒、難しい。


とりあえず名案を思いつくまで護りたい場所へ砂を集める練習だけしよう。



「本当にやるのか…」


「ええ、それはもうガツンとやってくださいまし!」


プロジェクト砂嵐は後はアイディアの思い付きだけになったので鱗の方を試してみる。

義兄さまに真剣を持たせ細かい石を鱗状に纏わせた腕を突き出す。上級ポーションもエリクサーもあるから部位欠損は勿論即死以外は治せるのに義兄さまの顔は真っ青だ。


「せめて模造剣に…」


「わかりましたわ、仕方ありませんわね」

出来れば実践と同じ状態で試してみたかったが出来ないなら仕方ない。安全だと判断されたら真剣の方もやってくれるだろう。


それから何度か怪我をしながら鱗の状態や鱗と皮膚の間に砂のクッションを挟むなど微調整を繰り返し何とか形になった。


怪我をした際の治療はチェルシーが冷静に上級ポーションをかけてくれたが、時折冷静さを欠いた義兄さまがエリクサーを無駄に使ってしまったので早めに練習を切り上げた。もったいない。


翌日、上機嫌なお姉さまに聞かれた。

「昨日、オスカーが何度もわたくしにご機嫌伺いをして来て可愛らしかったのだけど何か知らないかしら?」


「私に怪我をさせてしまった自責の念に駆られていたからでは?もちろんちゃんとチェルシーが手入れしてくれたのでなんとも無いのですが、少し無茶させてしまったかも知れません。」


「あらあら、当面はオスカーを甘やかさないと。あとルイーズ、ふだん荒事に慣れていない人間は少しの怪我でもとても恐ろしく感じてしまうわ。気をつけなさいね?」


「はぁい。」

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