第2話 ソウル2日目(火曜日) 修正版
※この小説は「韓国グルメ旅」の修正版です。実は、パソコンの操作ミスで編集中に保存できなくなり、新しいページで再開した次第です。文言や表現を一部修正しております。もう一度読み直していただければと思います。
トラベル小説
朝7時に目を覚まし、朝食会場でコーヒーだけを飲んだ。ビュッフェ形式で食べることもできるが、ハムやチーズ・サラダといった軽食中心でアメリカンスタイルなので特に食べたいとは思わなかった。それより朝一番で行きたい店があった。
8時半、地下鉄に乗って「鐘路5街(ジョンノオーガ)駅」で降りる。開店の9時少し前に広蔵市場(カンジャンシジャン)に着いた。そこにユッケ通りというのがあり、10軒ほどのユッケ専門店がある。そこで前回も入った兄弟ユッケ(ヒョンジュンユッケ)の扉を開けた。朝1番で他に客はいない。前回にも座った席に陣取り、
「たこユッケ」と「あわびユッケ」を注文した。
調理場では、たこを調理するトントンという包丁の音が聞こえる。生きているタコを切っているのである。韓国名物タコの踊り食いである。ユッケもその日に調理されたものだということで新鮮だ。ほのかな甘みがおいしい。日本で食べられるユッケもどきとはまるで違う。
10分ほどでユッケがでてきた。たこユッケは足が動いている。妻は気味悪がって、口の中に入れようとしない。半分ずつ食べようということだったが、結局たこユッケは私が食べることになった。口の中に入れると吸盤が上あごにくっつく。それがちょっと気持ち悪い。でも、しばらくするとくっつく力がなくなり、かむことができるようになる。いつもは私の方が妻より早く食べ終わるのだが、今回は私の方が遅かった。でも、前回同様満足すべき味だった。2人分で3000円程度はリーズナブルだと思う。
その後、地下鉄に乗って安国(アングク)駅に行く。そこから歩いて5分。世界遺産昌徳宮(チャンドックン)に着く。市内にある5つの王宮の中でもっとも保存がいい場所である。本宮である景福宮(キョンボックン)は戦争による被害が大きく、別宮である昌徳宮が王室で利用されていたのである。日本の皇族から朝鮮王朝に嫁いだ方子(まさこ)様が暮らしていた家も、この昌徳宮の敷地内にある。11月のこの時期は木々が色づいてとてもきれいだ。土塀沿いのイチョウ並木の黄色が輝いて見える。
入場券は300円程度。入ると韓流ドラマのロケ地で利用されるだけあって、王様が輿に乗って移動するシーンが思い起こされる。自分も行列の一員になったつもりで歩く。しばらく歩くと政庁である仁政殿(インジョンジョン)に到着する。その前に、臣下が並ぶ庭があり、そこに正一位、従一位といった小さな標識が建っている。仁政殿の前に臣下が整列したシーンが目に浮かぶ。
仁政殿の脇から案内図に従って、宮殿の外をめぐる。オンドルの火をたくところや、チャングムがいたであろう水刺間(スラッカン)を見ることもできる。30分ほど歩くと、後苑(秘苑)の入り口に着く。ここまではフリーで歩けるが、ここからはグループ行動となる。別料金(800円ほど)を払って、指定の時間に入城する。朝1番なのでさほど待つことなく入城できた。50人ほどのグループだが、ガイドは英語で話している。1日に2~3度は日本語のガイドもあるようだ。
城内というより王宮の裏庭ということで、森の中を歩いている。10分ほど歩くとメインの演慶堂(ヨンギョンダン)に着く。その前には愛蓮池(エリョンジ)がある。昌徳宮の中でもっとも画になるところだ。脇に学問所である愛蓮亭(エリョンジョン)がある。池に蓮が咲き誇る季節は、まさに絵葉書の世界だ。
妻は愛蓮亭の脇にある大木のところに行って、
「ここよ、ここ。チャングムがここをぐるっと回ると子役からイ・ヨンエに変わったところ」
と言って、自分も木の周りを走りまわっている。「チャングムの誓い」を何度見ただろうか、妻は最高潮に高揚している。
3時間ほどでガイドツアーは終わった。秋の紅葉が一番いい季節だとガイドさんは言っていた。妻は満足した顔をして昌徳宮を後にした。
昼食は、地下鉄で国会議事堂まで行き、「花蟹堂(ハフェダン)」に行った。国会議事堂の近くを歩くと、警察の機動隊の車両が列をなしていた。なにかデモでもあるのだろうか。やたらと警察官が多い。韓国の若者は徴兵制を免れるために警察官になるという方法があると聞いたことがある。それでやたらと若い警察官が多いのかもしれない。
花蟹堂はビルの中の店舗から新装開店をして、TV局前の一等地に位置していた。前に来た時は、ふつうの店だったが、今はオブジェが飾られ、しゃれた店になっている。日本のTVで紹介され、それで有名店になったようだ。
昼食時を過ぎていたので、店内は空いていた。座ってすぐに前回と同じく、この店の看板メニューである「カンジャンケジャン」を注文した。「ワタリガニの醤油づけ」である。ここの店はマダムの出身である韓国東部の浜から直送されるワタリガニを使っているとのこと。身の入りが厚く、食べ応えがある。ほじくり出してから赤飯を甲羅にいれ、かきまぜて食べるとこれがまたおいしい。「ごはん泥棒」と言われるのもわかる気がする。一人分は500円値上がりして3500円程度になっていた。新規開店した分だろうか。でも、日本で食べたカンジャンケジャンとは全くの別物だ。日本の物は醤油の味が濃いが、ここの味付けはまろやかなのだ。一度は食べる価値があると思う。
その後、ソウル駅に寄って高速鉄道KTXの指定席を予約した。明後日、慶州(キョンジュ)に行くためである。本日分は売り切れとのこと。もともと自由席はないので、事前に指定席をとっておいて正解だった。
ホテルにもどり、ベッドで足を伸ばす。少し歩き疲れた。夜は観劇である。有名な「ナンタ」は前回見た。パフォーマーのコミカルな演技と観客を巻き込んだコントにはゲラゲラ笑わされた。また見てもいいと思ったが、妻が
「ペインターを見てみたい」
と言うので、ネットでチケットを手配しておいた。夜7時からなので、その前に軽い夕食をとろうということで、カルグクスを食べに行くことにした。韓国風うどんである。韓国通の友人の話では
「カルグクスもいいけれど、それといっしょに出てくるキムチがうまい」
と言っていた。南大門にカルグクス通りがあるということだが、劇場からは遠いので、劇場近くのカルグクス屋さんに入ってみた。6時の開店すぐに入ったので、客はいなかった。2人分で800円程度。リーズナブルである。まずはキムチがでてきた。一口食べてみると、キムチ特有の酸っぱさがない。朝に漬けたものだということだ。いわば浅漬けである。日本人の口に合う。一皿を平らげると、すぐにお代わりをだしてくれた。韓国のおもしろいところは小鉢料理は食べ放題ということだ。先ほどの韓国通の友人は
「韓国では全部食べると失礼になるからね。ほどほどに残すのがマナーだよ」
と言っていた。食べ残すということで、もう満腹で食べられません。という意味をあらわすらしい。全部食べるということは、足らなかったという意志表示なのか、日本とは考え方が違う。やはり韓国は外国なのだ。
大鍋でカルグクスが出てきた。日本ならば4人分の量だ。
「韓国の店はふつう1名分というのはない。最低2名分から。1名分を食べたいならハンバーガーショップとかのファーストフードの店に行くしかない」
と友人が言っていたのを思い出した。
味は日本のひっぱりうどんに似ている。鍋ごとゆでているので、麺の味がスープにしみている。とろみのある汁である。小鉢にとって食べるのだが、キムチといっしょに食べると刺激があって、さらにおいしくなった。これならいくらでも食べられると思った。が、やはり量は多かった。劇場に行く時間がせまってきたので、ほどほどに残して店を出た。
「マシッソヨ(おいしかったよ)」
と言ったら、マダムはニコッと笑っていた。そのころには他の客も来て、店は忙しくなっていた。
「ペインター」は、4人のパフォーマーが画家に扮して演技を行う。4人がばらばらに描いているのに、それを合わせるとひとつの画になったり、逆さにすると別の画になったりするトリックアートの世界である。流れるような演技で客を楽しませる。最後にはフォトタイムがあり、パフォーマーや画を撮影することができる。今までにない試みである。これも自信のなせる技か。他の人ではできないステージだということを誇示しているかのようだった。「ナンタ」がゲラゲラ笑えるステージとすれば、「ペインター」はスゲーを連発するステージだといえる。
帰りはタクシーに乗った。ホテルのチラシを見せると、すんなりと行くことができた。500円ぐらいでついた。日本なら2000円ぐらいの距離である。黒塗りの優等タクシーはそれぐらい取られるということだが、一般のタクシーは安い。
「目的地さえきちんと伝えられれば利用する価値はあるよ」
とこれまた友人の話である。
部屋に入り、シャワーをあびてベッドに入る。ほどよい疲れと高揚した気持ちですぐに眠りに入った。明日は「韓流ドラマツアー」である。
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