第2話

「久しいな、犬」


いや、今は田中一郎だったか。とボスが応える。

俺はボスの目の前でハッキリと口を開いた。


「ボスにお願いがあります、私をまた殺しの道具として使って下さい」


一時間前。


「お父さん、早く帰ってこいって言ったのに……」


私は美容室である父親の事を心配していた。

いつもと顔色が違う父親は、もう帰ってこない気がしたからだ。


「そうか、今日はアイツの……」


田中一郎は義理の娘の本当の父親の写真を見て呟いた。

今日はアイツの命日だった。


「仕事帰りに花買わねえとな」


美容院。


カット中である田中一郎は、前髪を伸ばした三つ編みの女性に声を掛けられた。


「店長!電話です」


「急用か?」


「みたいですね、一昨日の続きをしたいって……」


後でかけ直すと言いますか?と心配な声で聞いてくる

俺の部下は俺の殺しのことを教えなかった。


「……ああ、」


「もしもし店長は今、えっあの!」


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