都市伝説2
時間は午後三時半。ホームルーム終了のチャイムった
それからものの数分で生徒は帰り支度をし、教室を出ていく
教室には僕を含み三人しかいなくなっていた
いつも一緒に帰っている幼馴染は、いつも通り部活があるからあと2時間は待たなくてはいけない
日直の仕事も終わり、出遅れた帰り支度も終わらせた
部活が終わるまで時間があるし、さっきの話でもちょっと調べてみよう
ネットに色んな書き込みがあるけどやっぱり研究所みたいなものしかないみたいだ
それに光が言ってた話はいくら探しても出てこない。それだけ小南がすごいってことだ
俄然楽しみになってきた
ネットサーフィンを続けていたら、僕のスマホから彼女の大好きな音楽で設定された、着信音が爆音で教室に鳴り響いた
この音量は絶対に迷惑だが、東方本家の彼女が設定したのだと言ったら文句を言う人は居なくなった
同情までされる始末だ。彼女はこの辺では有名だからな・・・いい意味・・・だったらいいんだけどなあ
「朝いつも通りって言ってたのにな」
アイコンを通話にスライドしてスマホを耳に当てる
「何やってんのよ!!いまどこ!?」
「叫ばないでよ・・・耳が痛い」
マイク限界に口を近づけ思いっきり叫んだ少女
護衛対象であり、僕の幼馴染である
日本国立中学校三年
真っ赤な長髪の仁王立ちがよく似合う女の子
東方本家のお嬢様
近衛家は代々本家や重要人物の護衛を生業としているのもあり、本家のお嬢様をいろいろな事情があって僕が担当することになった
といっても彼女が本気で異能力を使えばあたり一帯を吹き飛ばせるくらいの力をもっている
だから武力的な護衛ではなく異能力を使って周囲の状況を把握し主人に伝えるのが僕の仕事
いや違う。好戦的な彼女をしっかり監視するのが僕の仕事となっている
最近の彼女はかなりおとなしくなったので監視する必要ないかなと思って時々サボっている
それに東方に喧嘩を売るようなやつは日本にない
「結構待ってるんだけど!」
「いや、華蓮が早すぎるだけじゃ・・・」
受話口の向こうで鈍い金属音が聞こえた。多分交通表示か何かを殴ったのだろう。折れてないことを祈る。怒られるのは僕だ
これでもおとなしくなったのだ。おとなしく
ただ、今日の華蓮は少し気が立っているみたいだ
部活が短かったからかな
これ以上怒らせてはいけない。町が。というより僕が壊れる
「ごめん、ごめん、すぐにいくよ」
「そ・・・それならいいわ。ささっと来なさい。待っててあげるから」
「うん。わかっ——
たと言いかけて僕は言葉を止めた。
最後の授業が終わってからもう1時間はたったはずの人気のない教室。
もうみんな下校して僕一人だけだと思っていた教室にそれも僕の目の前の席で彼女はぽつんと一人座っていた。
スマホから聞こえる声を無視して僕は通話を切った
数秒でまたかかってきたので本体の電源を落とした
夕焼けに染まる教室
鶫が梳かしてあげたんだろうか、朝は無造作だった髪が整い輝いていた
すごくきれいな金髪の髪だ。朝とは全然ちがう
もう十月で暗くなるのも早い平和だからといってもこんなにか弱い少女には危険かもしれない
それに朝から体調が悪そうだったし、できるなら親御さんを呼んで・・・
「君はまだ帰らないの?」
多分返事は返ってこないだろうけど言わなきゃいけない気がした
「そうだな・・・そろそろ帰ろうか」
朝にも聞いた、かすれた声・・・少し奇麗に聞こえたのは気のせいじゃないと思う
僕はスマホの電源をもう一度入れて、何十件もの着信履歴にぞっとしながら着信の相手に“帰れなくなったから先に帰ってて”とメッセージを飛ばしてもう一度電源を切る
僕は彼女を追いかけてみることにした。なぜかそうしないといけないような気がしたから
はたから見ればただのストーカー行為でしかないのだがそれでも僕は彼女から目を離せなかった
彼女は南側に歩いていく
僕の家は東側にあるから、きっと帰りはかなり遅くなるだろうし華蓮にこっぴどく叱られるだろう。蹴りぐらいは入れられるかも入れない
だけど今はそんなこと気にしていられなかった
彼女はどんどん人気のない道に入っていく
南側特有の田園地帯が広がっている。この先に家なんてないような気がするけど
そして僕はだんだんと輝きを帯び始めた彼女の髪に気が付いた
太陽が完全に見えなくなる少し前、彼女の髪は教室で夕日に照らされていた時とは比べものにならいくらい輝き始めた
太陽が落ちて夜になるにつれてと髪の輝きは美しさを増していく
完全に日が落ちて夜になってもその髪は輝きを失わなかった。失ってないようにみえた
急に彼女が振り返った。髪の間から見える目は血のように真っ赤で暗闇でも光って見える
僕はあった目をそらすことが出来ずその場で動けなくなった
彼女はその小さな口をわずかに動かし、何かを言っている
何を言っているかはわからない。
息をのみ瞬きをした瞬間、彼女とそこにあった景色は消え、目の前に“近衛”と書かれた木製の表札のかかった家が忽然と姿を現した
僕の家だ
家が出現したのではなく、僕が何者かの手によってここに転移させられたのだろう
これが彼女の仕業なのか、それとも別の誰かの仕業なのかはわからなかったが、そんなことはどうでもいい
昼と夜で容姿が異なる龍見有栖、そして突然の転移
この謎の現象が、彼女が、光に依頼したことに何か関係しているのではないかと、土曜の探索が俄然楽しみになった
自身に起きた不可思議な現象の余韻に浸りながら、一番星でも探そうとしたとき後ろからドロップキックが飛んできた
「帰れないって言っておいてなんで先についてるのよ!!!」
僕の後に帰ってきた華蓮が鬼の形相をして仁王立ちしていた
これは長時間コースだ・・・
少しの後悔を持ちつつ、家の門をくぐった
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