15.ヤキモチ!?
――あれから30分後。俺はリカさんと一緒に
「おぉ! うめぇじゃねえか!」
「えっ? ははっ、本当ですか?」
もみ(お米の原形)がざーっと音を立てて
「見込みがあるぜ! 気に入ったぁ!!」
「うぉっ!?」
ばんっと背中を叩かれた。
リカさんもマッチョだけど、何というか種類が違う。例えるならそう、リカさんが『競泳選手』で河童さん達は『ボディビルダー』って感じだ。もやしな俺からすればどっちも眩しくて仕方がない。
「旦那、可能であれば坊ちゃんをお借りしたいのですが」
「ん~……
「ぜっ、全然大丈夫です! ぜひ手伝わせてください!」
「えっ?」
「「「おぉ!!」」」
「いいぞ、坊主!!」
周囲から野太い歓声が上がった。作業場にいるのは全部で20人くらい。牛や馬みたいな見た目の妖さんもいるけど、大半はゴリマッチョな河童さん達だ。
ここは男所帯なのもあってか、いい意味でカラっとしてる。俺のこともすんなり受け入れてくれて、正直本当にありがたかった。だから、そのお礼も込めて立候補した。何処まで役に立てるかは分からないけど、俺なりに励んでみようと思う。
「明日から頼むぜ!」
「待ってるからなぁ!」
「はっ、はい! よろしくお願いします!」
屈強な妖さん達に見送られながら、リカさんと並んで精米所を後にする。少し離れたところでリカさんが小さく息をついた。
「痛く気に入られたね」
ふてくされたように、だけど何処か誇らしげな様子でリカさんは言った。俺にはそれが妙に
「無理しないでね」
「ありがとうございます! 本業に支障をきたさない程度に頑張るようにしますね」
「あ……」
「?」
リカさんの動きがぴたりと止まった。驚いてる? かと思えば、口元を押さえてふふっと笑い出して。
「そっか。さっきのは
金色の瞳は相も変わらず優し気で慈愛に満ち満ちてるのに……何でだろう? 背中がぞくっとする。つーか、ヤキモチって!!! いや、待て待て! 他意はない! 絶対にない!!
「もっ、もしも! もしも俺がバテちゃって本業に支障をきたすようなら、その時は『操術』で俺の体を動かしてもらえますか?」
「無理」
「なっ、何で?」
「もう解いちゃったから」
「はっ!?」
「大丈夫だよ。優太の人柄はもう十二分に伝わったと思うから」
「いや……でもまだ、数えられるぐらいの人達としか――」
「小さな里だから」
正直嬉しい。だけど、それ以上に不安だ。リカさんの肩には、里のみんなの命がかかってるんだ。出来ればもう少し慎重に判断してもらいたい。
「さて、里の案内はこれぐらいにして最後に私のとっておきの場所に案内しようか」
「っ! いいんですか!? ありがとうございま――っ!」
手を取られた。そのままぎゅっと握って微笑みかけてくる。
「えっ? ……えっ!?」
「嫌?」
「っ、イヤじゃないですけど」
頭が、口が回らない。心臓の音がうるさ過ぎる。ヤキモチ。ヤキモチ。ヤキモチ。まさか本当に?
「ふふっ、それじゃあ行こうか」
「あっ、あい……」
どんどん膨らんでいく。期待とわくわくが。押し潰そうとしても押し戻されて。ダメだ。抑えられない。
「~~っ」
視界に映るのは地面ばかり。顔はしばらく上げられそうにない。
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