終の剣閃 ヴェロニカ編7 穿花の一撃 電磁崩拳


「ここへ来てよろしいのですか? ウィディア神、転生の仕事があるのでは……」



「いーのじゃっ! 神にも『あふたーふぁいぶ』というものが必要なのじゃっ!!」



「レインちゃんも息才かえ? というかおぬしら……ボロボロじゃな」



「私よりマスターの方がダメージを負っています」



「ふむ! 先におぬしらを治すかのう! ん~ほいっとな!!」

 そう軽く流しながら胸の前で手をパンと叩くと、みるみるうちに鋼鉄の鎧の傷が治っていく!鎧の再起動までかかるその魔法はウィディア神の魔力の高さを現していた。



「さて! お次はヴェロニカじゃな! どこにおるんじゃ?」

 無言で指を指す鋼鉄。その先は木々をなぎ倒し吹き飛ばされた方角だった。



「おぬしら……加減せよと申したであろう?」



「加減できる相手ではなかった。戦いの中で、そう感じた」



「ほう……おぬしにそこまで言わせるとは……そのヴェロニカの強さを目の当たりにし、その昔、剣神を志していた自分が重なって見えたのかのう?」



「そうなのかも……知れませんね……」

 背中の剣を手に取りじっと見つめる鋼鉄。どうやら何か思うところがあるようだ。


                  ◆


「お~パリパリいっとるのう! おぬし、雷の魔法を使ったじゃろう? のう鋼鉄よ」

 倒れているヴェロニカに回復魔法をかけながらふむふむとするウィディア。



「しかも、何か搦め手を使って勝利を掴んだ……そうじゃな?」



「搦め手というほどのものではありません。ただ、奥義にカウンターを合わせただけです」



「普通の者は奥義にカウンターを合わせようとはせん。並の精神ではできん。そのカウンター自体に、何か秘密があるのじゃな?」



「両腕と両脚に雷の魔力を付与し、自らを小さな弾としてレールガンの要領で打ち出し、亜高速移動させる。それが、直撃魔法『穿花の一撃 電磁崩拳』ヴェロニカの奥義及び速さを超える為には、直撃魔法の練り具合、機動機甲術(ブラスト・アーツ)のタイミング、全てを完璧に合わせることが必要でした」



「なるほどのう! じゃからスーツが機能停止しておったのか!! およ?」



「珍妙な技を使う男……! その強さは! 本物だ……認めてやる」

 ウィディアに回復魔法をかけられていたヴェロニカが力なく起き上がる。



「む? 起きたか」



「して鋼鉄よ、この者は星のチカラを宿しておったのかの?」



「いえ……星の石が反応しませんでした。どうやら星のチカラの継承者ではないようです」



「黙って聞いていれば星だのチカラだの意味のわからないことを……! おい! そこの娘! おまえは一体何者だ!!」



「よーくぞ聞いてくれたっ! わしの名はウィディア! 神サマじゃよ~!!」



「神の名を騙る不届きものめ! この場で叩き切ってくれるわ!」

 ウィディアに対し二本目の刀を抜き切りかかろうとするヴェロニカ。だがその斬撃は無慈悲にも次元の歪みへと吸い込まれていってしまう。




「無駄じゃよ。ワシに物理攻撃は通用せん」

 冷たいオーラがウィディアの周りに漂う。二ヤリと笑うその眼は暗黒の様相だった。



「ひっ!! 殺さないで……」

 腰が抜けペタリと座り込んでしまうヴェロニカ。完全に戦意を消失している。



「なーに命までは取らん! ワシらはただ、おぬしが星のチカラの継承者だったか見極めたかっただけじゃ」



「星のチカラ? そんなものは知らない! 私がもらったスキルは剣に関するものだけだ! あとは……」



「……あとは?」



「全身が黒い鎧と機械生命体を見つけたら攻撃しろ……と」



「ほう? その神の顔と名前は?」



「し、知らない! 顔は仮面で隠していたっ! 名前も明かさなかった!」



「まさかの…………」



「まあ良い、この件はワシの方でしらべておこう」



「それではヴェロニカよ、ここで起こった事は忘れるのじゃ……よいな?」

 こくこくと高速で頷くヴェロニカ。無言で顔が引きつっている。



「それでは! これからもこの世界を~って、……もうおらぬわ」

 気づけばヴェロニカはものすごい速度で逃げ出していた。よほどウィディア神の事が怖かったのだろうか。



「ふむ……刀を忘れているな……しかし、この刀、見れば見るほどいい刀だ」

 刀を手に取りまじまじと見つめる鋼鉄。武器コレクターの血が騒ぐ。



「戴いてしまってよろしいのではないでしょうか? マスター」



「ドロップアイテムじゃな! 取っておくがいいぞよ!!」



「あれだけの豪傑だ。また相まみえることもあるだろう……その時まで、借りておこう」


 鋼鉄は『秘剣 流れ星』を手に入れた!!



「さて、一旦転生の間に戻るかの! プレゼントもあるでな!!」

 やっとのことで終の剣閃、ヴェロニカとの激闘を制した鋼鉄たち。他の神との衝突にさらされつつも、この星をあとにするのだった。



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