第6ー2話 初夜

レイアだけだ。

俺に優しくしてくれるのは。

コイツは、別け隔てなくいい奴だ。

ウサ耳ゆりっ子のシェリスにも、天然と見せかけて結構イカれてるアドミラにも優しい。


しかも、本気でゴブリン討伐をしようとしてくれてる。


「お、お前はいい奴だな」


「……あ、ああ。なんだか分からんが、気に病む必要はない。人生きっとうまくいくぞ」


お前がもっと貞操ゆるゆるだったらな。

まだ俺は救われたかもしれねえよ。


もう俺に望みはないんだ。

卒業の見込みがないんだよ。一生童貞のまま【コールセンター】という謎スキルを持ち、「召喚勇者(笑)」として生きていくことになるんだ。


死にてえよ。

もうやだよ。


ギィャギィャッ!


異世界無双と、ハーレムを許さない神に絶望していたところ、突如現れたのはゴブリンだった。


見た目は想像通り、腰蓑を巻いた緑色の小学3年だ。

小学生と違うのは、ランドセルがないことと、不気味な鳴き声と、ダラダラ垂れるヨダレぐらいか。

うん、これはもうただの小3だな。


「よしっ、戦うぞ!」


レイアの発破が掛かり、俺は手斧を握りしめた。

緊張の初戦闘。

嫌でも心臓が躍動する。


「……臭いですぅ。それになんか汚ーい。もう帰りますぅ、みなさん頑張ってぇ!」

「ああっ、待って。私も帰るぴょん!」


振り返ると、腕組みしながら帰ってく二人の姿が、遠くなっていく。


「はあああ?おいお前ら!」


「ジュン!説教は後だ、集中しろ!」


俺の心情なんて知る由もないゴブリン5匹は、気持ち悪い鳴き声でニヤついていた。

たしかに目をそらすのは危険だな。


それに……奴らが戦闘に関わると、逆に足手まといになったかもしれない。

そう考えると、レイアと二人で戦うほうが、良いんじゃないかとも思えてきた。


「私が右半分をやる。ジュンは左を」


「オーケー」


コイツ、頼りになるな。

友だちから、仲良くしていきたいものだ。


ギィャギィャッ!


「来るぞッ!」

「おうッ!」


ゴブリンたちは走り出した。

隊列とか作戦とかはまったくない。

ただ獲物に飛びかかる、そんな感じだ。


勝てる。

二人ならば間違いなく。


まず気炎を上げたのはレイアだった。


「ぅぉぉおッ!」


スポンッ――。


よしっ。今度は俺も……。スポンッ?


「っしゃあオラ!」


ザシュ――。


ゴブリンは見事に絶命し、だらりと力なく崩折れたわけだが。


「キモッ!あーーー、キモいキモい!キモい!」


これが、すんごく気持ち悪いの。

ティッシュ一枚でゴキブリを掴むような、あのゾワゾワが全身を駆け巡った。

しかも斧は、ゴブリンの頭に刺さったまま抜けなくなった。


全身に鳥肌を立たせながらも、必死に斧を抜こうとした。


「クソッ、抜けない!変な意味じゃなく抜けない!レイア!援護を!」


そう言ってレイアを見ると、まさかの事態に陥っていた。


「わ、私の、剣が……壊れた」


彼女の手には柄だけがあった。

何がどうなったらそうなるのか知らんけど、根本からぽっくり逝っちゃったみたいだ。


「そうはならんやろッ!」


叫んでみるが、事態は何も変わらない。


「ジュ、ジュン!援護を!」


「ぁぁぁぁあ!なんでこうなるんだよぉぉぉぉ!」


俺は手斧を放して、レイアに迫るゴブリンへとタックルを見舞った。


ギィャッ!


「ぉぇぇえ、ふ、風呂に入って、くれよ」


臭さがハンパない。

肌の質感も、よぼよぼの皮が気持ち悪い。

ヨダレをダラダラと垂らし、暴れるたびにゴブリンの凶悪なナニの感触が伝わってくる。


「もぅやだぁぁあ!」


俺は必死だった。

わけも分からず無我夢中でゴブリンを殴りつけ、踏みつけ。

ようやく一匹が絶命したところで、ハッとした。


ギィャギィャッ!


「……や、止めろ!止めてくれ!」


ギィャッ!


「へぶっ」


3匹のゴブリンに包囲され、俺は魔の手に落ちてしまった。

服をビリビリに破かれ、手慣れた手つきでズボンを下ろされ、デロデロと全身をくまなく舐め回されました。

そして熱く激しいディープキスまで……。


「ぉぇぇ。お願いします……掘られるならイケメンがいい……」


俺はレイアを見た。

壊れた剣の刃を探している、あのバカ剣士を見つめた。


俺の処女が散りそうなんですけど。剣のほうが大事ですか?

レイアさん。


「レイア……助けて……」


「ちょっと待っててくれ!すぐに!すぐに剣を見つける!私の命なんだ!」


「お、お前のスキルは【徒手格闘術】だ、ろ……」


ギィャッ!


ゴブリンは、ゴブリンたちは腰蓑を脱ぎ捨てた。

そこにあったのは、小3とは思えないイチモツ。

禍々しいまでの、凶悪なナニであった。


「そ、そんなの壊れちゃう……」


思わず口をついて出た言葉は、俺の憧れの言葉だった。

いつかヒロインに言わせたい。

そんな夢のような……。


クソ、こんなとこで。

こんなキモい生物に。


やられてたまるか!






――――作者より――――

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