第2話

聖教祭に半ば無理矢理行く事になった。

でも、結局行かないといけない事は2年前に学習したから諦めよう。

諦めてデートに行くからさ。

もう勘弁して欲しいんだけどな〜

僕と一緒に一つの机を囲んでいる三人娘を見ながら僕はつくづく思う。


「今日は何のお説教?」

「アークム君。

今日はお説教ではありません」

「今日はアークム君を褒めてあげます」

「よくやったよアークム君」

「なにが?」


全くもってよくわからない。

大体この三人娘の言う事はわからないのだけど。


「リリーナちゃんをデートに誘ったらしいじゃない」

「しかも聖教祭デートだなんて」

「入手困難なチケットまで手に入れて」

「あー、あれね」


チケットはリリーナが手に入れたんだけどね。

多分ルナからだと思うよ。

なんで僕が手に入れた事になってるの?

そういやあれは僕にくれるって言ってたのか。

って事は僕が手に入れたって事か?

なんてややこしい。

話が長くなりそうだから黙っておこう。


「もう帰っていい?」

「「「ちょっと待って!!!」」」


立ち上がろうとしたら止められた。

早く帰りたいのに。

せっかく今日はリリーナがルナと会う約束あるからって1人で帰れる日なのに。


「まだ帰ってはダメです」

「私達の話は終わっていません」

「むしろここからが本題です」

「えー。

なんなの?」

「リリーナちゃんから誕生日の件は自分から言ったと聞きました」

「結局アークム君は気付きもしなかった」

「それは由々しき事態です」

「そうなの?」

「「「そうなの!!!」」」


そんな前のめりで言わなくてもいいじゃないか。


「とりあえず過ぎた事は一旦置いときましょう」

「何か埋め合わせは考えてるのかな?」

「もちろん考えてるわよね?」

「全然」

「「「なんでよ!!!」」」

「なんでと言われましても……」


あ〜あ。

早く帰りたいな〜


「それはダメだよ!」

「いくらリリーナちゃんが優しいからっていいはず無いよ!」

「むしろ許してくれてるからこそ埋め合わせしないと!」


一体誰の話をしてるんだろう?

リリーナは優しくも無いし、許してもくれても無い。

だってあんなに殴られたもん。


「じゃあ適当に何かあげるよ」

「「「適当でいいわけ無いでしょ!!!」」」

「えー。

ならどうしたらいいんだよ〜」


三人娘がコソコソ話を始めた。

もう考えるの面倒くさいから任せちゃおう。


ようやく決まったみたいで三人娘は僕の方を見る。


「やっぱりデートの日に埋め合わせするのがいいと思うの」

「サプライズ的なのが喜ぶと思うわ」

「プロポーズをしたら完璧ね」

「却下」

「「「どうしてよ!!!」」」

「僕は埋め合わせでプロポーズって良くないと思うよ」

「確かに」

「アークム君にしてはまともな事言ってる」

「ぐうの音も出ない」


なんか凄く失礼な事言われてる気がする。


「ならディナーに誘うのはどうかな?」

「デートの後のディナーはテンション上がると思うよ」

「きっとリリーナちゃんも大喜びのはず」

「まあ、それぐらいなら。

じゃあ帰りに適当に店に入るか」

「「「なんで適当に済ませようとするの!!!」」」

「えー。

ご飯なんて美味しかったら何処でもいいじゃん」

「良くないよ!」

「雰囲気も大事なの!」

「味も妥協したらダメだからね!」

「面倒くさいな〜」

「「「面倒くさがるのが一番ダメ!!!」」」

「そんな事言われても、オシャレな店とか知らないし」

「嘘でしょ!?」

「アークム君貴族だよね!?」

「一つぐらい知ってるでしょ!?」


それが知らないんだよな〜

僕は味重視だしな〜

……あっ、あったわ。


「美味しくてオシャレなクレープ屋さんなら知ってるよ」

「いいじゃない!」

「クレープなんて洒落てるじゃない!」

「やれば出来るじゃない!」

「一回ルナに連れて行かれたからね。

あそこは美味しかった――」

「「「そこはダメ!!!」」」

「えー。

なんで〜?」

「あり得ないでしょ!」

「デリカシーってのが無いの!」

「他の女に連れて行かれた店なんてナッシングだよ!」

「でも、ルナだよ」

「「「誰とかじゃないの!!!」」」

「難しいよ〜

もうそっちで決めてよ〜」


僕の何気無い一言に三人娘の目が光った気がした。


「本当はアークム君が考えないとダメなんだけどね」

「そこまで言うなら任されてあげるよ」

「楽しみにしててねアークム君」


そう言って三人娘は走って退散して行った。

なんかもの凄く嫌な予感がする。

……まあ、いっか。

とりあえず放っておくか。

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