第53話 アマンダは憑かれた

「失踪時は、ミニスカートタイプの忍者装束です。色はピンク色」

「ピンク? 忍者?」

 一応警察には、正式に届けを出す。


 警察には、Nシステムがある。

 無論風でも追うが、便利なものは使う。


 アマンダは、同人誌を扱う書店に行く途中だった。

 最近は、スマホでも見られるが、紙の方が良いと妙なこだわりを持っていた。


 修行はしたが、まだ数年。

 とっさの時には術が発動できないし、浄化は特殊。

 風の関係者でも、発動できる者とできないものが居る。


 

 アマンダは通知を見て、ウキウキで買い物に出かけた。

 お気に入りのサークル。それの新作。

 美人お姉様が、年下を食べ尽くす物……

 願望がダダ漏れで、周囲の気配察知までおろそかだった。


 横に止まった、窓まで真っ黒なワンボックス。

 出てきた、手にはスタンガンが握られていた。

 言わずと知れた、感染者達。


 浄化の風が吹き、数が激減したため、妻を餌にして感染させた。

 定期的に浄化されているから、使い捨てである。


 気がつけば、後ろ手に縛られ転がされていた。

 アマンダは思う。

 縛り方が成っていない。

 伝統緊縛術が、使われていない。

 亀の甲羅が……

 

 悔しかった。

 こんなにふざけていたのは、逃げられると思っていたから。

 伊吹をして丹田に力をためる。


 気合いを入れて、風を……

 あれ? 集中ができない。

 寝ている間に、薬を射たれていた。


 そう興奮と感覚が鋭くなる物。


「やれやれ、あの風はめんどうだね。おっ目が覚めたのか?」

 その男は、なんと言うか普通でさえ無さそうな男。

 それも中年。

 アマンダのゾーンからは外れている。


「何者?」

「うーんくせ者さ。コスプレ好きなの? お嬢ちゃん」

「好きだが、それがしは帰らせて貰う。帰さないと、大変な目に遭うぞ。秘密結社の忍びであるからな」

「ほう秘密結社? その秘密を知りたいのだよ。散々じゃまをしてくれたからな」

「忍びたるもの、口など割らん」

 きっと睨み付ける。


「まあきっと、そうも言っていられなくなるさ」

 下を脱がされ始めたとき、意味を理解をした。

 暴れるが、力が入らない。


 その薬は、優秀だったらしく、敏感な所を少し触れられただけで、目の前に火花が飛ぶ。

「ぐっ」

 舌を噛もうとしたが、心までは忍びになりきれていなかったようだ。


「あっ、ああああっ」

 何かが入ってくる。

 その感覚と、快感。


 頭がおかしくなる。


 そして、何か別の何かが入ってきて、頭の中にモヤがかかる。

 自分の中に、何かが入ってきた。

 すると嫌いなはずの相手が、愛おしくて好きでたまらなくなる。


「ああああっ。もっとぉ」

 あっさりと陥落。



 その夜、屋敷に忍び込もうとする二人。

 アマンダと鬼谷 祐一。

 シチュエーションとしては、迷子になっていたアマンダを保護して連れてきたとなっていた。

 だがそんな、甘い設定は許されない。


 門から中に入ると、二人の周りに風が巻き、アマンダは浄化される。

「ちっ、もうか」

 だが逃げることはせず、屋敷に向かって走りはじめる。

 手には、どこから入手をしたのか、銃が握られていた。

 トカレフ TT-33、戦争したりゴタゴタしているから、流れてきたようだ。


 気がついて、出てきた者に躊躇なく発射される。


 幾ら風が強力でも、流石に7.62ミリの弾は強力で流しきれない。

 飄重達が撃たれてしまう。


 流石に近所で銃撃の音が聞こえて、他の家も集まってくる。


「ちっ流石にまずい」

 男は、周囲に配置させた車から、手下を呼ぶ。

 無論感染者だ。


 ただその手には、銃が握られている。


 見た感じ、普通の主婦や学生が、バンバンと躊躇なく撃ってくる。


 警察も集まってくるが、どう見ても普通の市民。

 ただ、手には銃が握られていて撃たれる。

 警官といえど、銃撃戦などはしたことが無い。


 防戦をしながら、応援を呼ぶ。


「颯司、浄化をしろ。この一帯だ」

「はい」

 闇の中、キラキラした光を纏った風が周囲を吹き抜ける。


 だが、上手く浄化されず、周囲の警官までが黒い霧に感染をしていく。


 力比べ。

 浄化と感染のせめぎ合いが始める。


 その時、誰かが撃った弾が、颯司の肩に当たる。

「どわっ」

 肩を引っ張られる感じがして倒れ込む。

 焼き付く様な痛み。


 治癒の風を使うが、痛みで上手く集中できない。


「颯司」

 倒れていたアマンダが、その光景を見て叫ぶ。


 あわてて、立ち上がり背中を撃たれる。

「んぎゃ」

 突き飛ばされた感じで、パタンと倒れてしまう。

「ふぐうっ」

 地面で顔を打ちつける。


 鼻血をたらしながら、颯司の元に這っていく。

 それは、アクション物の、ヒロインのように。

 そう実際、捕まり脱出中のシチュエーション、アマンダが燃え上がらないはずはない。

 ショックな出来事はあったが、抱いて貰えばそれでをOKなのよぉ……


「颯司、大丈夫?」

 雫は、撃たれている颯司に駆け寄る。

「ぐえっ」


 途中で、じゃまなピンク色のカエルを踏んだようだ。


「颯司、撃たれたのか」

 庭に、セラミック並みの堅さを持った壁が生える。

 そう、ちょっとだけかっこよくなった、陸斗が登場。


 颯司に駆け寄る途中、ピンクのモモを発見。

 しゃがみ込んでなでてみる。

「あんっ」

 まだ薬か暗示か、それとも開発されたのか、色っぽい声が出る。

 むぎゅむぎゅしながら、周囲の敵をマッピングをして、銃を握っている手を容赦なく土の弾が撃ち抜く。


 雫は、颯司の傷を治しながら、浄化の霧を周囲に広げる。


 朱莉はおやつを食べていたらしく、バームクーヘンを一層ずつ捲りながら食べつつ走ってくる。

 その所為で到着が遅れた。

「じゃまね、此の霧」

 

 朱莉は炎で霧を払ってしまう。

「馬鹿何やっているの……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る