第27話 孤児院
街に戻り魔石を換金した後、俺達は今回のオーダー主でもある商業ギルドのガビさんに依頼の品を納めに来た。
「おやっさん。例のブツです」
俺は『コリーナの薬花』が入った羽バックをガビさんの前に突き出し、左手の親指を立てる。
「おー!グンジーか。今回の請負人はお前だったんだな」
「薬草に関しては任せてくださいよ。まぁ、この二人がいなかったらこんなに回収できなかったですけどね」
ガビさんは左の口角を上げ白髭をさすりながら俺達を順番に見る。
「最近、三人でいるところをよく見るな。両手に花とは。そんな顔してお前もなかなかやりおるわ」
そんな顔とはどういう顔だ?
「私達パーティーなんだからいつも一緒だよねぇ」
と言い俺の腕にしがみつくサイラ。
最近フレンドリーさに拍車がかかっているのは注意したほうがいいのだろうか。もちろん悪い気はしないのだが。
「おいおい。こんなところでやめてくれよ。いちゃつくなら別の場所でやってくれ」
「いや、いちゃついてるわけじゃないんです!」
俺は両手を前に出し否定する。
いや、でも端から見たらいちゃついているのか。
もう何でも良くなってきた。
抱きついた腕を振りほどかれたサイラは口を尖らせているし。
そんな光景を微笑ましそうな表情で見ていたガビさんが思い出したように手を打った。
「そうだ。グンジー、お前収納スキル持ちだったよな? この子達の兄弟に差し入れがあったんだ。一緒に持っていってくれないか」
「差し入れですか? 別にいいですけど」
確か二人は長く孤児院で育ったはず。
兄弟もいるのか。
「ガビさんいつもありがとう!」
「ありがとうございます」
「当然よう!未来の冒険者の役に立つことが俺達の生き甲斐だからな」
渡された荷物には食料に生活用水、服やら雑貨やらが大量に入っていた。確かに収納スキルがないと大変なほどの物量だ。
「毎回こんなに貰ってるのか?」
「そうなんです。ガビさんは私達が小さい頃からいろんな物を持ってきてくれていて本当に助けられてます」
「いつか恩返しするからね!」
「おう!期待せずに待ってるぞ。こんな立派に育ってくれただけで充分だけどな。俺なんかより兄弟達のことを頼むぜ」
預かった荷物を巾着袋に収納し、俺達は商業ギルドを後にした。
去り際にガビさんが肩を組んできて「頼むぞ」と小声で一言。
荷物のこと?じゃないよな。やっぱり。
俺は無言で入ってきた時と同じく親指を立てた。
二人は半年前に天啓を受けた後、孤児院を出て宿屋を転々としているらしい。
しかも、兄弟というのは血のつながった関係ではなく孤児院の子供たちのことのようだ。
だからあんなに荷物が多かったんだな。
メイン通りから離れた路地の一角に建物はあった。前世でいう保育園や幼稚園のような場所を想像していたが、昔ながらの木造二階建て小学校といった佇まい。
「「サイラ、ルミナ〜」」
扉を開けるや三人の子供が出迎えにきた。
「お〜、みんな元気だった〜?」
二人が両手を広げ三人を抱きしめる。
「あらあら、一週間ぶりね」
奥からこれまた二十代と思われる女性二人ともっと小さな五人の子供達がトテトテ走ってきた。
「ん?」
足元を見ると、1〜2歳ほどのちびっ子が口に指をくわえ俺の服を引っ張っている。
「あ、この人はグンジーおじさん!私達とパーティーを組むようになった冒険者だよ」
間違ってはいないのだが、改めておじさんと言われるとちょっとショックだな。
「はじめまして、グンジーさん」
「グンジーおじしゃん、こんちは〜」
「ぐんじー、ぐんじー」
「ふぁっふぁ」
足元の子はまだ言葉が分からないか。
指を咥え裾を握ったまま、ずっと俺を見上げている。
「ミア、その人はパパじゃないの。グンジーさん。こっちにおいで」
と言って女性は足元にいた女の子を抱きかかえた。
「すみません。騒々しくて」
「いえ、こちらこそ急にお邪魔して申し訳ありません。ガビさんからいろいろな品物を預かってきましたが、どちらに置きますか?」
「あ、そんなことまでしていただいて、ありがとうございます」
食堂のテーブルに預かった品物を並べると、お茶を出してくれたので休憩することに。
スタッフらしき女性とサイラ、ルミナの四人は久しぶりの再会に花を咲かせている。
見たところ食堂も中庭も広く、綺麗に整頓されていて外観ほどの古めかしさはない。
むしろ古民家風カフェのようなレトロ感があって、なんとも言えない趣がある。
「男がいるなんて珍しいね。誰だい?あんた?」
急に大きな声で話しかけられ驚いて振り向くと、ふくよかな体型の女性が俺を見下ろしていた。
「あ、勝手に上がり込んでしまってすみません。サイラさん、ルミナさんとパーティーを組ませてもらっているグンジーと申します。よろしくお願いします」
「へえー、あの二人がパーティーね。私はここの寮母(マザー)をしてるラメラってもんだ。最近、楽しそうにしてるのはそのせいか。最初の頃は元気がない時もあって心配してたんだけど、ここ数ヶ月で表情が見違えるように良くなってね。あんたのおかげか!」
「いえいえ、とんでもない。むしろ私のほうが助けられてるので感謝してますよ」
バンと背中を叩かれ、俺はちょっとむせ返る。
身体硬化しておけば良かった。
「その歳で冒険者とは珍しいね。雰囲気的にはそんなに怪しくなさそうだし、合格にしといてあげるよ。あの二人が選んだんだからね。時間あるならここの案内でもしようか?」
いつの間にか合否判定されてしまった。
なんだか、ガビさんとタイプが似てるな。
「いいですか?ぜひお願いします」
二人もまだシスター達との話が終わらなそうだし、大丈夫だろう。俺はマザーに連れられ施設を案内してもらうことにした。
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