思考的実験

しゃぼん玉

しゃぼん玉が空に高く舞い上がっていったのを目で追いかけていた。

大きな玉がひとつだけ、ゆっくりとどれよりも高く飛んでいったけれど、建物の二階付近でパンと弾けて割れた。


それを合図に我に帰ったら、小さな子どもの泣き声がした。

その方へ目をやるとお婆ちゃんに抱っこされた小さな女の子が小さな手での人差し指を指し、指の方を向きながら、何かを訴えるように泣いていた。

お婆ちゃんは体をせっせと揺らし、困った顔で優しくあやしていた。

「はいはい、ママすぐ戻ってくるからね〜。」と。


それを見ていたら、何故か、ぐずっと涙ぐんでしまって、何故か、僕の選択は間違いではなかった、あれでよかったのだ、と、溢れそうになる涙をこらえながら、その光景を後にした。

車の後部座席にだらしなく寝転び、急勾配の坂道を登る車のエンジン音が背に感じた時、そのまま、フロントガラスの方へ目をやったとき、神戸の100万ドルの夜景が視界に広がっていた。

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