case1 胸を張る元カノ(4)

 麻緒が転校して来てから一週間経った。

 彼女が転校してきてからというもの、彼女と紗奈さんを共に登下校するようになり、また二人から激しめのスキンシップを受けるようになった。


 はっきり言うと、やらしいことが多くなった。


 そして今日は、放課後に紗奈さんの家にて遊ぶことになった。

 もう既に彼女の家に上がって、今は彼女の部屋にいる。

 部屋にあるベッドの上で二人に挟まれるように抱きつかれながら、かなり艶のある雰囲気に満たされている。


「樹ってば女の子二人に挟まれて嬉しそー♪」


「そりゃ嬉しいだろ。大好きなんだからさ」


「うぇへへぇ♪樹くん大好きぃ♪」


 からかってくる麻緒に対して紗奈さんはデロデロになって服がはだけている。

 もう少しだけめくったら色々と見えてしまいそう……と思ったら見せてきた。

 見つめていたのがバレたらしい。


「樹くんってばおっぱい見たいんだぁ♪いいよいいよ見てみて♪私の全部見てぇ♪」


「わぁぁ紗奈ちゃんってば積極的……」


 びっくりするほどに積極的になった紗奈さんに麻緒が感心したような声を出した。

 ここまでアピールが激しいと理性がなくなってしまうので勘弁して欲しいが。


 そんな紗奈さんに押し倒されてしまい、あれよあれよという間に脱がされてしまった。


「ごめんね麻緒ちゃん、先にシたい」


「いいよ、ウチは初めてもらってるし」


「……聞かなきゃよかった」


 麻緒の言葉に触発された紗奈さんは貪るように、まさに犯すとでも言うように行為に及んだ。

 実は経験者なのでは?と思ってしまうほどのソレだが、後で聞くとアレで初めてだったらしい。

 才能がありすぎる。ずっと受け身だったわ。


 交互に情事に耽った俺たちであったが、あっという間にゴム一箱を空にして時刻は午後六時。

 シャワーを浴びた俺たちは名残惜しい気持ちでありながらも紗奈さんの家を後にした。


「樹とお別れしてからずっとシてなかったから、凄い気持ちよかった。またしようよ♪」


「そうだな。今度は二人で」


「えへへ♪樹からの誘いは嬉しいね♪でも、それならちゃんと紗奈ちゃんも相手してあげてよ」


「もちろん」


 二人で話をしながら歩いていると最寄り駅の近くだ。そうかからない内に麻緒の家があるだろう。

 そんな時に、見覚えのある二人組が向こうから歩いてきた。


「あれ?麻緒じゃん!しかも御堂みどうも一緒かよ!」


「マジか、麻緒帰ってきたの?」 


 彼らは中学の時、よく麻緒に声をかけていた男子二人組だ。

 最初こそ俺たちの関係に嫉妬していたものの、しばらくするとソレをネタにいじって来るようになった。

 だが、応援もしてくれたヤツらだ。


「久しぶりだねぇ、先週帰ってきたんだよ。しかも樹と同じ学校なんだ」


「いやぁ良かったぜ。麻緒が転校してから御堂のこと見てらんなくてよ」


「そうだなんよ。だからクラスの雰囲気もどっか暗くてよー……そんなだったから高校に行ってからもずっと心配してたんだぜ?」


 そう、二人の言う通り麻緒が転校してからというもの、ずっと俺の胸中には虚無感が居座っていたと思う。

 そんな俺に声をかけてきたのは壱斗や燈璃に晴政たちだが、それだけでなく彼ら二人もそのうちの一人だった。

 いつの間にか、俺たちの関係を男女問わず祝福しててくれたんだよな。


「でもよ、またお前らのイチャコラが見られて良かったぜ。俺も明日彼女とイチャついてやろ」


「羨ましいなどいつもこいつもよ!俺だってなぁ!」


 二人との再会に笑顔が溢れる。彼らも大切な友達なんだ。

 麻緒もこの二人も、そして皆との時間も大切な宝ものだ。


 きっと楽しい明日が待っているんだろう。

 随分と幸せ者だよ、俺は。



 そんな幸せ者な俺は、これからも観月さんに追っかけられていく事をまだ知らなかった。

 素敵な恋人二人との幸せな日々に、失恋相手に追いかけられるというスパイスを添えて。

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