六十二話 そろそろ文化祭
ウチの学校はそろそろ文化祭の時期である。
どんな感じになるのかなー、なんて ぼんやりと考えながら紗奈さんと一緒に教室に入り自分の席に着く。
「おはよう
「おう、おはよう」
友人と話していた壱斗がこちらに気付いてやってきたところで挨拶をする。
今日は文化祭の準備についての話もあるので俺達もそのことで雑談をする。とはいえ何もイメージなどないが。
「いよっす
「おはよう」
いつもと変わらない明るさで挨拶してくる燈璃はやっぱり素敵な友人だ。そんな彼女だが、なぜか俺の顔やらをジッと見つめて顔を赤くしている。
すると彼女がボソッと一言呟いた。
「ったく、相変わらずアツアツだなお前ら……」
「えっ」
燈璃の呟きの意味が分からずにポカンとしてしまうが、彼女の視線の位置をイメージしたところ、一つの結論にたどり着く。
あー……跡ついてるわ。
「別に何も無いよ、お気になさらず」
「嘘つけ!」
咄嗟に誤魔化したものの、やっぱりソレは通用しなかったようで軽く叩かれてしまった。だめかぁ……
「そういや、文化祭っつってもなんか案とかあるのかよ?」
「いや、全然」
正直、俺たちのいるクラスはそんな雰囲気など特になく、まぁなんか軽い出し物あればいーんじゃねー?くらいしか考えていない。
ぶっちゃけた話だが、ウチの学校にいる生徒たちはかなりその辺が極端だと思う。
一年の皆の頑張りが試されるね。
結局ウチのクラスは適当な食べ物を出し物としてやろうと言うことになった。形としても分かりやすいから丁度いいのか。
そういえばほかのクラスはどうなんだろうと思って天美にも聞いてみたのだが、彼らは去年定番モノで楽しんだそうでそちらも食べ物にしたんだって。
「やっぱり定番は後輩に譲らないとな」
どうやら去年はよほど楽しんだらしく、今年ほゆったりと楽しみたいらしい。
そういえば確かに彼のいたクラスはなにやら盛り上がっていたような……
今日は図書室に来ました。もちろん紗奈さんと一緒にね。
二人で本を読んでいるのだが、その途中であることに気付く。観月がいたのだ、いつもの席に。
まぁそれだけなら気にする事はないんだけど、この間廊下で接触してからというもの何故か分からないが、チラチラと視線を向けてくる。
そんなに俺と話したいのか?まさか、まだ好きだって言うつもり?そんな馬鹿な。
まぁ普通に気まずいのだろう、けど俺にはそんなこと関係ないのでスルーさせてもらう。
とはいえ、彼女は文化祭に何をやるのだろうかと単純に気になった。これはただの好奇心。
だから俺は、帰るタイミングで観月に声を掛けてみた。
「私のクラスですか……」
「そうそう、何やるのかなって」
それで話を聞いてみたところ、彼女のクラスは割と乗り気らしく、迷路かお化け屋敷で迷っているらしい。
ちょっと気になるな、また今度話聞いてみよう。
「そういえば一年の子たちは何やるんだろうね?」
確かに、ちょっと気になる。まぁ別に観月のクラスも後になれば分かるのだが、せっかくだし話を聞いてみたかっただけだ。
それこそ知り合いのいないクラスなら別に無理に聞く気は無いかなーって。
「でもちょっと、ああいう空気は苦手です」
「あぁ観月さんってそういうとこあったね」
彼女はあまり多人数を好まず、むしろ少人数での行動を好む人だ。落ち着かないから嫌なんだって。
俺もそっち側だけど、最近は紗奈さんのおかげで多人数でも楽しめるようになってきている。
やっぱり素敵な恋人がいるといいね。
「観月さんは、どういうのがやりたいとかあったの?」
それを聞いたのは紗奈さんだ。たしかにどうなんだろう?でも去年の時は特にないとか言ってたような……うろ覚えだけど。
「私は、特にないですね。そもそも空気が苦手で……」
「そっか……まぁそういう人もいるよね」
まぁ、だからできるだけ周囲と距離を置いていたのだろう。そういや過去にも色々面倒があったとか言ってたっけ。なんか思い出したわ。
観月には悪いが聞きたいことは聞いたからな、正直もう話すことは無い。紗奈さんとちょいちょい話をしているみたいなので邪魔する気は無いけどね。
観月との関わりが始まったのは去年に彼女から声をかけられことからだが、アレコレ話しているうちに過去の話で愚痴のようなこと聞くことも増えた。
去年の文化祭の時に聞いたことだが、何かしらのイベントがあるといちいち関わろうとしてくる男子共もいたらしい。
というかそういう奴らが不快な程に距離を詰めてくるらしく、それが理由で賑やかなのは嫌なのだとか。
ノリに乗じて変なことでも考えている輩もいるんだなぁと、話を聞いていて思った。
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