二十八話 分からないこと
どうして、ウチがあの先輩と関係があるなんて思われているんだろう。
完全に疑われてしまって距離を置かれてるいる以上できることがない。少しでも話ができれば誤解を解けるのかもしれないけど、過去の自分がバカな事ばかりしていたせいでそれも叶わない。
昨日、
それからすぐに彼女から手を引かれて先輩と別れた。その時の奏の表情は少し険しかった。
その時の言葉が耳に残る。
『あの先輩は、身体が目的』
つまり女の子が抱きたいだけなのだと言うことは理解できるけど、それでも少し信じられなかった。
でも険しい表情の奏を見ているとそんなことも言えず、ただその疑問を飲み込むしか無かった。
「あの人と樹って、何かあったのかな……」
それを聞ける相手もおらず、ただグルグルとそんな疑問が頭を巡る。
少なくとも樹はあの人に敵意を持っている。
ただ持っているだけとは到底思えないけど、でもあんなに優しい人が本当に酷いことを?
樹が話をしてくれないということに少なからずフラストレーションを感じていたのだろう、頭では分かっていてもついつい樹を疑ってしまう。
それが良くないと思っているのに、それが余計に助長させてくる。
樹が変なことをして怒らせたんじゃないのかと。自分のしたことを棚に上げて。
そしてウチは思った…いや、思ってしまった。
あの先輩に話を聞いてみた方が良いだろうと……
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「なんなんだろうね、あの子たち」
隣にいる
まだ麻緒は分かる、中学の時から人を騙して酷い目に合わせるような性格なのは。
ただ観月に関しては分からない。
彼女とはただ趣味で喋っていただけの友達だ、確かに俺は彼女を好きになってしまい告白までしてしまった。とはいえその後にあんな身体目当ての先輩と付き合ったのは彼女の選択だし俺が恨まれる謂れはない。
考えれば考えるほど分からない、本当に俺の予想は正しいのか?
「なん、だろうな……」
どう答えればいいのか分からず、空虚な言葉しか出てこない。そもそもそんなことが分かればここまで苦労していない。
「分かるわけないか、筋が通って無さすぎだもんね」
「そうだね」
呆れたようにそう言った紗奈さんに同意する。
実際のところ何を考えているのかは本人達にしか分からない。
つまるところ、俺に害をなそうとしているとも限らないのだ。勘違いかもしれない。
「分からない事ばかりだけどさ、それなら私たちの関係を見せつけて距離を置かせてみればいいんじゃないかな?」
「?」
彼女の言葉が理解出来ず首を傾げてしまう。
見せつける、とは?
「そのままの意味、だよ♪」
そう笑みを浮かべた彼女の雰囲気はとてもダークなものだ。
つまるところ、目の前でイチャイチャしてやろうということか。ちょっと恥ずかしいな。
「私が傍に居るから気を引いても無駄だよって、ちゃんと思い知らせてやらないと……ふふふ」
黒い笑みでそう言った彼女は既にその気になっているのかいつもより強い力で腕を抱きしめた。
一体どこまでのことをやろうと言うのか、ドキドキする気持ちもありながら戦々恐々としてしまう。
「学校でスるっていうのもアリかな?」
「それはマズイ」
さすがに暴走しすぎだ、下手な人間に見つかった時が最悪なのでやるなら家の方がいい。
「あぁっ、色々考えてたら変な気分になってきちゃった……ウチくる?」
「おっふ」
紗奈さんの発言に困ってしまうが断る理由にはならない。俺は喜んで首を縦に振った。
「じゃーねっ、また明日!」
手を大きく振っている紗奈さんに手を振り返し彼女の家を後にする。
激しく動いたせいで身体が疲れた、とはいえ胸を満たすのは満足感だ。
良い気分の余韻に浸りながら家に歩みを進めていると、
しかもそこにはあの先輩と麻緒がおり、何かを話していた。
昨日からある疑問を解決できるかと思い、二人の話に聞き耳を立てるためその傍に隠れた。
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