BIGBANG〜伝説までの道〜

新田光

序章 BIGBANG

「最後の曲は『朧げな月、儚く美しく』だ! いくぜ!」


『おぉぉぉぉぉー』


 BIGBANG。今や伝説と呼ばれているバンドマン。彼らが奏でるデビュー曲はこの会場にいる者たち全員のボルテージを上げる。


 イントロの儚げな音。それが数秒続いた後、激しいロック調の音が微かに混ざる。


 この緻密で卓越された音楽を奏でているのは、三人。


 ドラムの神門春樹じんもんはるき


 ベースの神谷健斗かみやけんと


 ギターの榊柚葉さかきゆずは


 そして、その演奏に合わせ、最高の歌声を届けるのは銀河翔兎ぎんがしょうとだ。


 声の高さは中性的。しかし、男らしいたくましく、程よい低さが聴く者に心地良さを与える。


 かつてこの歌声を誉めてくれた人がいる。翔兎しょうとを音楽の道に導いてくれ、音楽の素晴らしさを説いてくれた、かけがえのない存在。恩人と呼べる存在。


 今、自分は彼女に恥じない演奏をできているだろうか。


 彼女は笑ったりしないだろうか。


 この歌を奏でていると、彼女の事を思い出す。そう、彼女と出会ったあの日を。


 俺達の伝説への道が始まったあの日を……

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