第4章 過剰な思惑

翔太の視点


映画研究会の活動が続く中、翔太は美咲に対する特別な感情が日に日に強くなっていることを感じていた。彼女の脚本には、他の誰にもない独自の感性があり、それが彼を引きつけてやまなかった。美咲が書く物語には、彼女自身の心の内が映し出されているようで、それを理解し、共感できるのは自分だけだと思っていた。


「美咲は、俺にとって特別な存在だ。でも、優奈も大事な友達だし、彼女の気持ちを無視するわけにはいかない……」


サークル活動を通じて、二人の女性に対する思いが交錯する中、翔太は自分がどちらを本当に選びたいのか分からなくなりつつあった。


優奈の視点


優奈は、美咲と翔太の距離が縮まっていくのを目の当たりにして、焦りと嫉妬が募っていた。彼女は自分の気持ちを隠すことに疲れ、ついに行動に出ることを決意する。


ある日の夜、優奈は涼を誘って飲みに行くことにした。翔太とは幼馴染である涼は、優奈の心情を知っていたが、彼女が自分に何を求めているのかまでは理解していなかった。飲み会が進むにつれ、優奈は酒の勢いを借りて涼に対して大胆に迫り始めた。


「涼、私、翔太のことが好きなの。でも、彼は美咲の方にばかり目が行ってる……そんなの、嫌だよ」


優奈の目には涙が浮かんでいた。涼は困惑しながらも、彼女を慰めようとしたが、その瞬間、優奈は彼にキスをした。酒のせいだけではない。優奈は自分の感情を抑えられなくなっていたのだ。


「涼、お願い……」


優奈は涼に対して身体を預け、彼に自分の心を埋めてもらおうとした。涼はその状況に動揺しながらも、彼女を拒むことができず、そのまま二人は一線を越えてしまった。


美咲の視点


翌日、優奈から「昨日、涼と一緒にいたの」と打ち明けられた美咲は、その言葉の裏に何か重いものを感じたが、優奈の真意を理解できなかった。ただ、彼女の態度がどこか変わったことに気づき、心に不安が芽生えた。


「優奈と涼が……?」


美咲は、その事実に動揺しながらも、翔太に対する自分の気持ちを整理できないでいた。そして、翔太が優奈ではなく自分に脚本を依頼した理由について、考え込んでしまった。


「私はただ、翔太に認められたいだけ……それ以上のことを望んではいけないのに」


しかし、その思いとは裏腹に、翔太との距離が縮まっていくにつれ、美咲は自分の中に芽生えた感情を抑えきれなくなっていた。



数日後、サークルの定例会議が行われる前、美咲は偶然、涼と優奈が密かに話しているのを見かけた。その様子に不安を覚えた美咲は、二人に何かがあったのではないかと感じ始めた。


一方、翔太は美咲に対する思いを抑えきれず、彼女に気持ちを伝えようと考えていた。彼にとって、美咲はただの仲間以上の存在であり、彼女と共に映画を作りたいという願望は、次第に強くなっていた。


その夜、サークルの会合が終わった後、翔太は美咲を呼び止めた。


「美咲、ちょっと話があるんだ」


美咲は心臓が高鳴るのを感じながら、翔太の言葉を待った。しかし、その直後、優奈が二人の前に現れた。彼女の表情は固く、どこか決意を秘めていた。


「翔太、美咲、ちょっと話があるの」


三人が揃った瞬間、これまで隠されていた感情が一気に噴出し、複雑に絡み合う運命が動き出そうとしていた。



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