第1章 フシギな出会い 第1話 祝?入学

 人類初の「才能保持者」が認定され、はや150年前後。


「才能保持者」は次第に、国内外問わず伝染するように広まった。

「才能保持者」の人口も増加し、社会的価値も同時に増加していった。


増加したといっても世界総人口80億人のうち約2万4千人。

数値に直して0.00025%ほど。


控えめに言って、かなり絶望的な確率。


なろうとしてなれる存在でもなく、

金があればなれるのかと言われるとそうでもないし、人としてよければなれるわけでもない。


しかし、もし認定されれば一生の安泰が保証される。


いわば、運ゲー。超低確率、ハイリターン。


そんな世の中だから、当然不服に思う人達が少なからず

出てくる。


政府に対し、「才能保持者」の認定をやめさせ、全員平等にしたがるデモ活動、「才能保持者」を偽り、多額の金を請求してくる詐欺など。


しかし、まだこれでも可愛い方だ。


中には嫉妬に狂って「才能保持者」を殺害しようとする人が出てきた。


残念なことに、こういうことは一度起こり、報道されると広まるのが異常に早い。


これまでの「才能保持者」に関係する事件の半数以上を殺害事件、殺害未遂が占めている。


他には、「才能保持者」として認定された自身の子供を監禁、人身売買にかけた親もいたそうだ。



 そんなことに見かねた政府は、ある時「才能保持者」専用の学校を設立した。


特立希望創作高等学校とくりつきぼうそうさくこうとうがっこう


名前は「将来、社会に出て人々の希望として活躍する、才能保持者を育成、排出する」に基づいてできたそうな。


ネーミングセンスなどは一旦おいておいて、この学校では、「才能保持者」と認定された、現役高校生のみが入学することができる。


また、本人または、本人及び両親の了解を得られた場合、国の監視下もと、安全に過ごせることを約束した上で、学校に宿泊できることになっている。


学校内では充実した設備がふんだんに使用されており、基本的には不自由はない。


食事も、持ってくることも可だが、栄養バランスが取られている学食がある。


国の監視下といっても、基本的には法律等に違反しなければ何をしても自由。…恋愛も。


この学校内で付き合い、結婚し、さらに「才能保持者」を子どもとして産んだ卒業生もいるらしい。


学業も充実していて、進学、就職、どちらの道を選んでも、何かしら保証がある。


そんな夢みたいな学校生活。


私には縁がないと思っていた。



 この国では、毎年この学校への入学者の年齢の人及び、それ以上の年齢の「才能保持者」認定のための身体検査などが行われ、その結果で「才能保持者」が発表される。


発表の時期になると、メディアやネット掲示板はそのことでもちきり。


中学3年生私は、ぼーっと認定者の名前が載った掲示板を眺めていた。


理由はなかった。ただただ時間を浪費して、無駄な時間を過ごしたかったのかもしれない。


50音順に名前が載ったページをスクロールしていくと、

カ行の欄にあった


私の名前が。


「狛枝 珀(こまえだ はく) 15歳 男」


『は?』


思わず、そんな声が漏れる。


理解ができなかった。頭が回らなくなっていた。


回らない頭で、必死に今の状況考え、ポストに何か入っていたのを思い出す。

まさかと思い、ポストを開けると、やけにき綺麗に見える封筒が一つ。


恐る恐る開け、中の紙を見る。

一番最初に目に来た文字は「招待状」。


『…』


この瞬間、全てを悟った。


まだ、送り間違いの可能性を考え、紙を読み進めていく。

そこには、「狛枝 珀 様」と書かれた文字。


(珀 "様"て…)


そんなことを思ったが現実は変わらない。


やがてその現実を受け止め、私の頭は真っ白になり、まるで全てを失い、絶望するようにその場に膝をつく。


残った事実は、

例の学校に招待されたこと、

私は、「才能保持者」になったこと、

それと、私は「狛枝 珀 "様"」になったってことだけ。


膝をつき数十秒経った後、私は我に返る。

急いで学校に行くための準備をしなくてはならない。


(買う必要のあるものがたくさんある)


そう思い、通販アプリを開いて、お目当てのものを見つけようとする。


その時ふと思った。


…わたしの才能ってなんだろう。


私は、何かに特出しているわけでもなく、何かが得意なわけでもない。


疑問に思ったのだ。なぜそんな自分が招待されたのか。


招待状の長ったらしい文章に目をやると、わざわざ前後にスペースを空け見やすくしている箇所が一つ。


目をやり、少し期待ながら自分の才能をみるとそこには


「幸運」


と、2文字だけ書かれていた。


『は?』


またも、声が漏れる。


理解ができなかった。

が、今度はしっかりと頭は回っていた。

そのうえで漏れた声だ。


(幸運て…)


いろんなことに振り回されながら、私の今後と才能、必要な商品を確認していく。



そこで、一度冷静になった。

おそらく、頭に登った血が戻ってきたのだろう。


…なぜ誰からも連絡が来ない。


もっと早く気付くべきだった。

メディアでもネットでもこんなに話題になっているのに、

友人から一切連絡が来ない。


事実確認も、お祝いの言葉もだ。


いや…やはり私はまだ冷静ではないのかもしれないな





…私には友人なんていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る