嫌われていない良かった!

 オレは家に向かい街路を歩いていた。後ろにはメルナと、いけ好かない男が居て無言のまま歩いている。


 話し声が聞こえない。どちらかと云えば重い空気が伝わってくる。

 メルナとは、そんなに仲がいい訳じゃないのか?

 そうなると……一方的に男の方がメルナを好きってことだよな。

 それなら、まだオレにもチャンスはある。いや、でもメルナの気持ちはどうなんだ?

 オレのことを、どう思っているのか分からない。だからと云って聞ける訳ないよなぁ。


 そう思いながら後ろを向いてみた。

 二人は目を合わせていない。いや違う、男の方はメルナをみている。

 それをみたあとオレは胸糞が悪くなり正面を向いた。


 やっぱりメルナは、あの男を嫌っている。どうにか助けてあげたい。オレにできることって何かあるのか?

 …………駄目だ! いい案が思い付かない。

 なんとかしてあげたいのに……もしこの男のことが嫌で逃げてきたなら助けないと。


 そう思考を巡らせオレはメルナを助けると決心する。


 ★♡★♡★


 ああ……嫌ですわ。

 ラクリウスが居なければグランと、お話できますのに……全然たのしくありません。


 そう思い私はグランの背中を、チラッとみた。


 やはり後ろ姿も素敵ですわぁ。男らしいし……あの背中に抱きつきたい。

 そう思っても無理よね。それに……グランの家に着いたら私の素性が知られてしまう。

 恐らくグランは私から離れていくわよね。

 婚約破棄のことも知られてしまいます。どうしましょう……グランと逢えなくなるなんて悲し過ぎますわ。


「メルナセリア……なぜ俺の顔をみてくれない」

「ラクリウス様、今は呼び捨てをし合うような関係じゃありませんよね?」

「アレは……まだ成立していない。いや、そもそも……前を歩いている男は親しげに名前を略していたが」


 ああ……言わないといけないのですか?

 察してくだされてもいいのですけど……。


「グランはいいのです。友人ですので、この方が話し易いですから」


 そう言い私は、グランをみる。


 えっ? グラン……一瞬だけ立ちどまった気がしました。

 もしかして今の話を聞かれました?

 どうしましょう……友人なんて言ってしまいました。でも、どう応えたらいいか迷ってしまったのですもの。


 その後もラクリウスは嫌になるくらい話しかけてくる。

 それを私は嫌々聞いていた。


 ★♡★♡★


 メルナはオレのことを友人だと思ってくれている。まあいい……嫌われていないってことだからな。

 それにまだ告白もしていないのに恋人なんて思われるわけない。

 でも良かった。メルナの気持ちを知ることができたからな。

 それはそうと……メルナは相当この男を嫌っているみたいだ。

 今ここで話をつけてしまえば、この男からメルナは解放される。

 だが、こんな道の真ん中じゃ目立ちすぎるしなぁ……どうしたらいい?


 そう思考を巡らせ周囲を見回す。


 人が多いな……メルナも我慢しているみたいだし、オレもそうするか。


 そう考えが纏まるとオレは家に向かい更に歩いていた。

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