第4話
「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください。」
軽く頭を下げて、私の任務はひとまず終わり。早いとこ他の作業に戻ろう、と席を離れようとした時。
パシッと手首が掴まれた。何? と視線を向ければ私の左手首が紅先輩に掴まれてて。
「え、あの」
「おねーさんさァ」
気だるげに声をかけられる。
「うちの高校の人でしょ?」
え、とその顔を見れば再び視線がぶつかって。
すぐに誤魔化せばよかったものを、私はまじまじと先輩の顔を見てしまう。
切れ長の瞳はやはりどこか気だるそうで。闇色がジトっと私を見据えてる。
鼻筋はすっとしていて、輪郭は細いのに男らしさを感じさせる。
なるほど、これだけの美形なら女遊びもし放題……じゃなくて。
「……離していただけますか?」
務めて冷静に私は返す。正直心臓はバクバクだしお腹の辺りがヒヤッとしてる。
なんで分かるの? 新入生の事も把握してるの? なんのメリットがあって?
「知ってるっしょ? うちの高校がバイト禁止な事くらい」
「……」
分かってるよ、分かってるけど。そんな、派手な頭髪の人に校則を咎められても……。
「やめなよ
甘い声で助け舟を出してくれたのは、栗生先輩。
サラッサラの金髪とたれ目がちな両眼の甘い顔。こちらも紅先輩に劣らずの美形。
「ごめんね? お仕事中なのに。」
栗生先輩は困ったようににこっと微笑むと、「亜主樹」と紅先輩を咎める。
仕方なく、といったように紅先輩は私の手を離した。スタッフとして再び一礼して、今度こそ私はレジ奥へ逃げる。この際戻るより逃げると言った方が正しい。
「ちよちゃんどうかした?」
先輩スタッフの
「あの人たち、同じ学校の先輩なんですけど……私が学校に内緒でバイトしてるのバレちゃったみたいで……」
私が言うと東海林さんはチラッと先輩たちの席を見て。
「なるほどね。いいよ、あの席私が担当するから、ちよちゃん私の方やってくれる?」
「ありがとうございます。」
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