第37話 わからぬもの

モンスターの老人たちの決断に触れた佐藤健一は、自身の過去と向き合うことになった。彼もかつては地方で生まれ育ち、東京に憧れて上京した人間だった。都会での便利な生活に慣れ、故郷には帰らなくなった彼にとって、故郷への強い愛着を持つモンスターたちの気持ちは理解しがたいものだった。


「しかしわからないものだな。便利さを捨てて都会から離れるその気持ち、考えに、昔は僕も地方人だった。東京に憧れて上京し、ある意味で憧れの暮らしを手に入れてからは地方には帰らなかった。」


彼の言葉には、自分自身の選択とモンスターたちの選択との対比が含まれていた。彼らの愛郷心は彼にとって新たな学びとなり、彼自身の価値観に揺さぶりをかけるものとなった。


健一は、自らの直感と経験に基づき、モンスターの老人たちが人間の老人とは異なる価値観とニーズを持つと考えていた。彼の観察によれば、モンスターたちは長い年月を経てもなお強靭で、環境の変化に対する適応力が高かった。それゆえ、彼らが故郷への愛着を持つことは理解できるが、その選択が全体の秩序に影響を与えることは少ないと見ていた。

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