第9話 ヒドラ救出

健一たちはリセルとブルムの導きに従い、人間の巨大都市へと向かった。そこには、強大な製薬会社があり、その中に捕らえられているヒドラたちがいるという情報を得ていた。都市は高層ビルが立ち並び、夜でも煌々と光るネオンが街を照らしていた。


「警備は厳重です。正面からの突破は難しいでしょう。」リセルが言った。


「私たちは地下から侵入するルートを見つけました。」ブルムが地図を広げながら説明した。「製薬会社の下水道を経由すれば、比較的警備の手薄な場所に出ることができます。」


「そこからどうやってヒドラたちの元へ行くかが問題だな。」健一が考え込んだ。


リセルは微笑み、「私の魔法で一時的に警備員たちを眠らせることができます。その間に進むのが最善でしょう。」


計画が整い、健一たちは深夜に行動を開始した。都市の下水道を通り抜け、製薬会社の地下へと侵入した。暗く湿った通路を進む中で、リセルの魔法が光を放ち、道を照らした。


やがて、地下から施設内部への入口にたどり着いた。リセルが呪文を唱えると、近くの警備員たちは次々と眠りに落ちた。


「今がチャンスだ。」健一は仲間たちに合図を送り、慎重に進んだ。


施設内部に入ると、厳重な警備と高いセキュリティが彼らを待ち受けていた。しかし、健一の冷静な判断とリセルの魔法、ブルムの知識が功を奏し、次々と障害を突破していった。


ついに、ヒドラたちが囚われている研究室に到着した。そこには、数体のヒドラが鎖で縛られ、無理やり毒を抽出されていた。彼らの目は悲しみに満ち、体は傷ついていた。


「こんなことを…。」ブルムが呟いた。


健一は怒りを込めて言った。「今すぐに彼らを解放しよう。」


リセルが魔法で鎖を破壊し、ブルムがヒドラたちに薬草を与えて治療を開始した。健一は警戒しながら周囲を見渡し、逃走経路を確保した。


「このままでは逃げられない。警備が戻ってくる前に一気に脱出するぞ。」健一が指示を出した。


ヒドラたちを連れ、健一たちは再び地下通路へと向かった。警備員たちが目覚め始め、追手がかかる中、リセルの魔法で幻覚を見せて撹乱し、ブルムの力で通路を塞いだ。


ついに、彼らは下水道を抜け、都市の外れに出ることができた。夜明けが近づく中、ヒドラたちの目には感謝の光が宿っていた。


「これで安全だ。」健一は安堵の息をついた。


リセルが微笑んだ。「あなたたちの勇気と決断が、ヒドラたちを救ったのです。」


ブルムも頷き、「これからはヒドラたちと共に、新しい生活を築いていきましょう。」


健一たちはウィローグローブに戻り、ヒドラたちを村の一員として迎え入れた。彼らの勇気と行動は、ウィローグローブの住民たちに新たな希望と団結の力をもたらした。ヒドラたちも、再び自由を取り戻し、新しい生活を始めることができた。


こうして、健一たちの冒険は一つの区切りを迎えたが、新たな挑戦と冒険が彼らを待ち受けていることを、誰もが感じていた。

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