第6話
私の投稿に気づいてくれたらいいな、なんて思っていたら、滅多に来ないSNSの通知。
それは私の会いたかった彼、『及川昴』のSNSだった。
何時に来てくれるかなんてわからない。
私も時間までは投稿しなかった。
会えたらラッキー、そんくらいの気持ち。
そしたら彼がいた。
私は彼が困らないように決めていた手順で家に招いた。
ぶっちゃけ家もまずいような気もしたけど、オートロックだし何とかなるような気がして。
結局彼は家に上がってくれた。
・・・・信じられない。
及川昴が私の家にいる。
この前ホテルでしたようにコンビニで買った缶チューハイ、の他にもお茶とスイーツを買ってグラスをだした。
何から話していいかわからなくて、とりあえずお茶をだす。
すると、彼の方から口を開いた。
「・・・あのさ、あれから君のことずっと探してたんだ。
大丈夫かなって心配で。
もうわかってると思うけど、僕は及川昴。君の名前を聞いていい?」
「
少し、困ったように笑う彼から、優しい人のオーラが出ている。
「遥さん、あとね、あの、謝らないと」
彼は少し目を逸らしながら言う。
「いくら君に引っ張られたからって、見知らぬ男に抱きしめられるの嫌じゃない?
髪も・・・触っちゃったし・・・」
ごめんね、と言った彼は俯いていたけど、私はそんなこと気にしていなかった。
「あたし、あの日よく眠れたよ。
久しぶりによく寝た。だから、それは気にしないでね。
あたしこそ、あなたをよく知らないまま引っ張ってごめんね。
テレビとか、芸能とか、疎くて。」
彼は俯いたままで、少し気まずい雰囲気が流れた。
それから先に口を開いたのは彼の方だった。
「あのね、あの日僕も嫌なことがあって。
・・・・友達が困ってたからお金を貸したんだ。久しぶりに会った友達。
芸能人になって、テレビに出るようになって色んな人から連絡来るようになった。
すごく遠い親戚とか、あんまり話したことない同級生とか。
お金を貸した友達は、結構仲良しだったよ。
でもね、いなくなっちゃったんだ。蒸発っていうのかな。
それで、僕は何を信じたらいいかわからくてちょっと嫌な気持ちになってた。
でも君は違った。僕のことを変に勘ぐったりしなかった。
・・・久しぶりに普通に話ができてうれしかったんだよ。」
私は驚いてしまった。芸能人って大変なんだろうな、と思った。
ましては映画で主演を演じる人なんて。
・・・・でも私は・・・・。
「あたし・・・・」
私が話をしようとしたとき、再び彼が話し出した。
「僕ね、君ともう一度会って今度は普通に楽しい話がしたい。」
彼がふにゃりと笑った。
優しい顔で。
私もそれは嬉しいと思った。
「普通にお喋りして、今度は愚痴じゃなくて、遥さんが好きな物とか話して」
でもそれじゃだめだ。
「だめだよ・・・あたしだって結局他の人と変わらないと思うから。」
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