ハッピーエンドの陰には
南村知深
第1話 二人の出会い
遅めの夕食をとりながらリビングのテレビで民放の天気予報をぼんやり眺めていた
「……なんで……」
若手俳優の中でもトップクラスの演技力と画面
だが、和花が驚いているのはそこではない。
実のところ、和花は芸能界に
だから、菅野ユウスケが選んだ相手――酒間スミの顔を見るまで、彼女が芸能界にいるとは思ってもみなかったのだ。
「…………」
画面の中で、酒間スミが嬉しそうな笑みを浮かべながら菅野ユウスケの隣に立って、レポーターの質問に答えている。
それを見ていると、和花は酷く複雑な気分になった。
と言っても、菅野ユウスケが好きだからというわけではない。単に彼が高校の先輩で面識があるというだけで、特に思うところもなく結婚のニュースにショックを受けているわけでもない。酒間スミに関しても、彼女と同級生で少々縁があったというだけで、二人のことは意識の外に追いやっていた。
しかしここで二人の姿を見てしまい、昔のこと――高校一年生の数か月を思い出して、無理矢理心の奥に押し込めていた感情がドアを叩き始めた。
忘れようとしていろいろなものを捨てることになった、過去の記憶が浮かんでくる――
・ ・ ・
現在、工業系中小企業の事務として働く和花だが、幼い頃からの夢があった。
それはファッションデザイナーになるという夢だ。
和花は
そうして日々
その才能の
――はずだった。
「あの、安芸さん、お願いがあるんだけど……」
和花が無人の教室に一人でいると、やや早足で入室してきたクラスメイトが席の前まで来て遠慮がちに声をかけてきた。
髪は野暮ったい三つ編みで、和花の
そうして猫背でおどおどしているせいか、身長が低いわけでもないのに、椅子に座っている和花が少し視線を上げるだけで彼女の顔が見えてしまう高さになってしまっていた。
「ええと……」
和花は初めて声を聞いたクラスメイトから突然話し掛けられ、デザインのラフを描く手を止めて首を傾げた。
人の顔と名前は一度見て言葉を交わすだけで覚えてしまう和花ではあるが、さすがに顔は知っていても初めて話した相手の名前が出てくるはずもない。
それに気づいたか、彼女はすぐに名乗った。
「私、
「ううん、こちらこそごめんなさい。それで浅春さん、お願いって?」
訊きながらノートを閉じ、視線を向ける。
浅春はあまり人と目を合わせるのが好きではないのか、ふいっと顔を逸らして机の上のノートに目をやった。それからしばし黙した後、やがて意を決したように口を開いた。
「その、安芸さんって、衣装のデザイン……するんですよね?」
「…………」
「それだけじゃなくて、作るほうも、できるって聞いたんですけど……」
「…………」
「ええと、その……」
「……?」
言いたいことがまとまっていないという感じではなく、
(……ああ、そういうこと……)
浅春が慎重に言葉を選んでいるような印象を受け、和花は彼女が何を言おうとしているかを察して、内心でうなずいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます