第51話 強盗

ある日、一馬が町で大工仕事をしている間、農場では異変が起こりました。一人の美しい女強盗が、金品を狙って農場の小屋に忍び込みます。彼女が静かに小屋の中を探り始めたその瞬間、農場の守護者たちが動き始めました。


ナビィは一瞬の隙を見逃さず、手を上げると素早く攻撃魔法を放ちます。魔法が女強盗に命中し、その勢いで彼女は後ずさりしますが、倒れるまでには至りません。「何なの!?」と彼女は叫びますが、次の瞬間、猫が彼女に飛びかかり、鋭い爪でその腕をひっかきました。女強盗は驚きと痛みによろめき、必死に逃れようとしますが、そこに待ち受けていたのは鶏たちです。


「さぁ、今度は私たちの番だ!」といわんばかりに、鶏たちは一斉に彼女を取り囲み、鋭い爪で足元をつつき始めます。女強盗は耐えきれず、その場に崩れ落ち、必死に手を振り回して抵抗しますが、徐々に力を失っていきます。


その瞬間、一馬が帰宅しました。目の前の光景に一瞬立ち尽くし、「何があったんだ!?」と声を上げます。ナビィが事の経緯を手短に説明すると、一馬は息を飲みました。彼女の美しい顔が傷だらけで、痛々しい姿に心が動かされました。


「さすがにこれはまずいな…。なんだか可哀そうだし、手当てをしないと」と、一馬はつぶやきました。


ナビィが驚いた表情で、「えっ、本当に助けるの?」と問いかけます。


一馬はうなずき、「まぁ、これ以上放っておけないだろ。しかもこんな怪我でここに置いておくわけにはいかない」と言って、回復魔法を施しました。すると、女強盗の傷はみるみるうちに癒され、意識を取り戻しました。


「助けてくれるなんて…」女強盗は呆然とした表情でつぶやきましたが、彼女が言葉を紡ぐ前に、一馬とナビィは彼女を町の警察のような場所へ連行しました。


町の警察官が彼女の顔を見て驚き、「こいつは…あの連続強盗犯か!」と声を上げました。どうやら彼女は他の農園でも多数の被害をもたらしていたようです。


警察官が一馬に深々と頭を下げ、「このたびは本当に感謝します。おかげで被害がこれ以上広がらずに済みました。報酬として、この魔石を二つ差し上げます」と言って、彼に魔石を手渡しました。


一馬は魔石を手に取りながら、「ありがとう。これで少しはこの農場も守りやすくなるかもしれないな」とほっとした表情を浮かべました。

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