第42話 最後のその時まで

一羽の鶏が初めて卵を産み、一馬はその出来事に驚きと喜びを感じました。しかし、地面に直接卵が置かれているのは心もとないと感じたため、次の日に町へ出かけ、藁を購入してきました。


藁を鶏たちの巣の場所に丁寧に敷いてあげると、鶏たちはすぐにその新しい巣を気に入り、数日間そこで卵を産み続けました。しかし、ある日一馬が卵を取りに行くと、鶏たちはバタバタと羽ばたきながら威嚇してきました。彼は驚きつつも、「わかったわかった」と言いながら、その日は卵を取るのをやめ、鶏たちに少しの時間を与えることにしました。


このやり取りに一馬は、鶏たちも自分たちの卵を守ろうとする強い本能を持っているのだと感じ、鶏たちをさらに大切にしようと心に決めました。


一馬が「なぁ、ナビィ、鶏って何年くらい生きてるものなんだ?」と尋ねると、ナビィは少し考えた後、答えました。


「鶏はね、普通に飼育していると大体5年から10年くらいは生きるんだよ。でも、食卓に並ぶ鶏は、通常1年から2年くらいの若い鶏だね。」


一馬はその答えを聞いて少し驚き、そして首を振りながら言いました。「可哀そうだし、食べるのは死ぬ間際でいいよ。だってそれに、あの鶏怖いもん。」


ナビィは一馬の反応にくすっと笑いながら、鶏たちがどんなに元気でたくましいかを改めて感じました。鶏たちを大切にしながらも、彼らの生命力には一目置いている一馬の気持ちがよく伝わるやり取りでした。

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