第4話 整備しよう

一馬は荒れ放題の畑を前にし、目の前に広がる草や木の密集にため息をつきました。長年放置されていたため、畑は完全に自然の手に戻っており、作物を育てるためにはまずこの荒れ地を整備しなければなりません。


その畑の端には、かつて誰かが住んでいたであろう小さな家が佇んでいます。木の壁は風雨に晒されて色褪せ、屋根には苔が生い茂り、ところどころ瓦が欠けています。窓枠も歪んでいて、ガラスはひび割れ、扉は半開きでギシギシと音を立てています。長い間、人の手が入らなかったために、この家も畑と同じように自然の中に溶け込んでしまったかのように見えました。


家の近くには、石造りの古びた井戸が静かに佇んでいます。井戸の縁には苔が生え、ロープはぼろぼろになっていましたが、一馬は何気なく井戸の中を覗き込みました。驚いたことに、井戸の底には澄み切った透明な水が静かにたたえられており、まるで時間を超えて清らかさを保っているかのようでした。


物置小屋に向かうと、中には使い込まれた斧とハンマーが置かれていました。一馬はこれらの道具を手に取り、まずは周囲の木々を切り倒すことから始めます。斧を振り下ろす度に、木の幹が響く音が周囲に広がり、少しずつ作業が進んでいきます。


しかし、時間がかかりすぎることに気付いた一馬は、女神から授かった「サイコキネシス」の力を使うことに決めました。彼は集中し、手をかざしてみました。すると、目の前の大木がゆっくりと浮き上がり、スムーズに畑の外へと移動されていきます。この力のおかげで、一馬はわずかな時間で畑全体を片付けることができました。


次に、彼はハンマーを使って大きな石や岩を砕き、畑の表面を平らに整えます。土を掘り起こし、腐葉土を加えることで、畑の土壌が再び作物を育てられる状態に整えられていきます。


整地作業を終えた一馬は、ふと喉の渇きを覚えました。彼は作物の育成にも水が欠かせないと考え、川へと足を運びます。川に着くと、澄んだ水が静かに流れており、一馬は持参したバケツに水を汲み始めました。バケツが満たされると、その水を畑へと運び、土を潤していきます。冷たく新鮮な水が畑の乾いた土に吸い込まれていくのを見て、一馬はほっと一息つきました。


ナビィが「すごいよ、一馬!これで作物を植える準備は万全だね!」と嬉しそうに声をかけました。


一馬は額の汗を拭いながら頷きます。「やっとここまできた。これからは植え付けだ。」


彼は手に入れた植物の種を丁寧に撒き、しっかりと土を被せます。こうして、放置されていた荒れ地は、一馬の手によって新たな命が育つ畑へと生まれ変わりました。

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