web小説投稿者が書籍化を迎えるまで
黄昏
第1話 運命のメール
それはある日届いた一通のメールから始まった。
それは投稿を始めた作品が、一周年を過ぎた頃だった。
自分の作品の一年の成果を確認したく、プレビューで得たポイントを移したばかりだった。
届いたメールのタイトルの一部に【カクヨム・重要】という文言が記されていた。
書籍化という言葉が頭をよぎるより先に、ポイントを移した事による本人確認でもあるのか?
はたまた投稿してる文章に、何か規制されるような問題が発生したのか?
最悪
そんな事を頭に浮かべて【カクヨム・重要】と書かれたメールに返信していた。
もしかしたら定期的に、無料で作られるアカウントが生きてるか確認し、返信が無ければサーバーの負担を減らす為に削除でもしてるのだろうか?
未体験の出来事で不安ではあったが、特に悪い事をした覚えも無かったので、呑気にそんな事を考えていた。
それからさして時間を置かずに新たな通知があったが、そのメールを確認したのは夜八時を迎えた頃だった。
タイトルの全文は諸事情により省きますが、先ごろのメールと同じく、一部を切り取ると【カクヨム・重要】そして「重大なお知らせ」と銘打ったメールが送られて来た。
一目見た瞬間、「本当にアカBANきたーッ?!」と驚愕する。
いやいや、待て待て、まだ慌てる時間じゃない。
その時ようやく書籍化の可能性に思い至り、「まさか?!」という感情が溢れ、鼓動が早鐘を打つもメールの本文を開くのだった。
内容は最終的に思い至った【打診内容:書籍化】であった。
本文を何度読み返しても【打診内容:書籍化】の文字が消えるはずも無く、一年書き続けた作品とはいえ、ランキングも高い位置を維持していたわけでもなくズルズルと下がり、箸にも棒にも掛からなかった作品なのに……
それが今になってなぜ?
という思いでいっぱいで、書籍化を喜ぶ感情は沸いてこなかった。
じっくり考えてから結論を出そう。
そう思い至ったには理由がある。
書籍化の打診が来たのは金曜日。
奇しくも三連休前の週末だ。
更に言えば三連休明けはお盆休みに突入する。大型連休だ。
出版社の出勤日や連休の事情は知らないが、返事がもらえるのは連休明けに違いない。
そう思うと気持ちにも余裕ができ、じっくりと考える事ができた。
まず初めに考えるのは「売れるのか?」の一言に尽きる。
出版社だって本を出版しても、一定数が売れ無ければ利益にならない。
ジャンル別の異世界ランキングや星の数を数えると、何とも心許ない。
出版社だけでなく印刷所やイラストレイター、もちろん書店やwebサイトの運営会社など、複数の企業にたくさんの人が関わって来る。
それだけの大きな仕事ともなると、恐らく重要な部分を担うであろう作者へのプレッシャーが半端ない。
もちろん相手は書籍を扱うプロフェッショナル。
担当者が「気に入ったから」なんて理由だけで、採算度外視の書籍化打診なんてしないだろう。
私の作品を読んだ上で、何かしらの魅力やフックを読み取り、売れると判断しての行動のはず。
そう考えると気も楽になり、連絡を取ってみようと分水嶺となるメールを送信するのであった。
結果として、書籍化に向け動き出す事になった。
初めのメールに明記された、【商業出版(弊社負担の書籍化)】の一文が、最大の後押しになったと思う。
こちらの負うリスクが少ないからね。
書籍化のメールが来た事に嬉しさがこみ上げたのは、連絡を取ると決め気持ちが落ち着いた頃に現実が見え、そこまで経ってようやく嬉しいと思えるようになった。
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