第3話「暗闇の中の試練」

クルミとエリック、そして冒険者たちは、ダンジョンの深層を進む中で次々と困難に直面していた。先日の戦いで少し疲れた彼らは、進むべき道を探している最中だった。


「この先、どうなってるんだろう?」エリックはダンジョンの広い空間に目を凝らしながら言った。「暗くて、全然先が見えないよ。」


「少し待って。」クルミは糸を使って周囲の探索を始めた。彼女の糸が空間を静かに這い回り、壁や天井に触れることで道を探っていた。「糸で周囲を調べてみるわ。」


「うん、頼むよ。」エリックは不安そうに周囲を見回しながら答えた。


クルミの糸が伸びる中で、突然、洞窟の奥から微かな声が聞こえてきた。それは誰かの叫び声のようだった。クルミとエリックはその音に耳を傾けながら、さらに奥へと進んでいった。



道を進むうちに、クルミたちは広い空間に辿り着いた。そこには、ひときわ大きな石の像が立っており、その前には大量の罠と仕掛けがあった。部屋の中央には、青白い光を放つ宝箱が置かれていた。


「これが…おそらく次の試練の中心だろう。」クルミはその光を見つめながら言った。「でも、罠が多すぎるわ。」


「宝箱があるけど、罠がひどいな。」エリックはため息をつきながら言った。「どうやって取り扱うか考えないと。」


その時、クルミたちの前に、カイルが現れた。彼は無表情で宝箱をじっと見つめていた。


「おい、君たちもここに来たのか?」カイルは冷たく言った。「どうせ、そんな糸なんか使っても宝箱を開けるのは無理だろう。」


「カイル、また君か。」クルミは目を細めた。「そんなことはないわ。糸で罠を回避できるはずよ。」


「それができるなら、やってみろよ。」カイルは挑戦的な目を向けた。「でも、君ができなかったら、俺がやってみせるから。」


クルミは黙って糸を伸ばし、罠のチェックを始めた。周囲の罠を一つ一つ慎重に調べながら、どこにどのような仕掛けがあるのかを把握していった。



サラが現れ、カイルと一緒に協力する形で進むことになった。サラは優しく言った。「クルミ、あなたの糸のスキルはすごいと思うわ。でも、カイルも力を試してみたいみたいだから、協力してみましょう。」


「分かったわ。」クルミは決意を新たにした。「協力して進んでみるわ。」


サラとクルミは力を合わせて罠を解除し、カイルはその間に宝箱を開けるための方法を考えた。しかし、その間に罠の仕掛けが巧妙に設計されており、なかなか前に進むことができなかった。


「これで…どうだ。」カイルが手に持った道具を使って宝箱を開けようとした時、突然、罠が発動した。爆発音と共に、部屋中に煙が立ち込めた。


「うわっ!」サラは驚きの声を上げた。「どうしよう!」


「待って、煙を使って仕掛けを解除する方法があるはずよ。」クルミは糸を使って煙を一部取り除きながら言った。「落ち着いて、私に任せて!」



煙が晴れた後、クルミとエリック、サラ、そしてカイルは何とか罠を解除することに成功した。しかし、その過程でカイルの態度が一層厳しくなり、クルミの努力を冷ややかに見守っていた。


「やっぱり、糸なんかで役に立つはずがない。」カイルは皮肉な笑顔を浮かべながら言った。「こんなもので宝箱が開けられるとは思っていなかったが、結局君たちも俺の助けがなければ何もできなかっただろう。」


「カイル、君の言葉はもういいわ。」クルミは目を閉じて深呼吸した。「これからも、自分の力を信じて進んでいくわ。」


クルミはその言葉を胸に、今後の試練に備えて心を整えた。彼女の中には、糸の力を信じる気持ちと、これからの困難に立ち向かう決意が芽生えていた。

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