6.


新居に引っ越してきて、落ち着いてきた頃。

大河が口を利けなくなった原因を探るため、大河と二人で病院へ行った。

大河と二人きりで外に行くのは初めてだった。しかし、相変わらず姫宮が何話しかけようが、大河は暇潰しのお絵描きに夢中なようで、こちらの話には聞いていない様子だった。


お絵描きするのが好きな子だから無理に話しかけても邪魔しているだけだ。そっと見守っていようと大河の描く絵を見ていると、順番が回ってきた。


『心因性失声症』と診断された。


そのような症状があるのかとはっきりとした診断が下されて、安心したのと同時に少なからずショックを受けていた姫宮は先生の話を半ば聞いていた時、口が利けなくなった出来事を詳しく開示された。


そうなった原因があるからこその症状だ。だから、そう求められるのはおかしくない。だが⋯⋯。


『普段と変わらず⋯⋯』


震える声でそのようなことしか言えなかった。

産まれてすぐに意味も分からず、取り上げられてしまったとはいえ、我が子に何かあったなんて言えない親なんているのか。


病院から帰ってきて、大河の下された診断を安野に伝えつつ、自分が暗い顔をしていることが分かるぐらいに自分のことを責める姫宮に安野が、


『姫宮様、あまり自分が悪いと思わないでください』


と、眉を下げ気遣うような言葉を掛けられた。

また心配させてしまっている。でも、自分を責めずにはいられない。

見た目からでは分からない、病院の待合室にいる時と変わらずに絵を描いている大河のことを不安な顔で見ていた。


そんな時だ。暗い空気を払拭させるチャイムが鳴った。

仕事に気持ちを切り替えた安野が即座にインターフォンを見た。


『はい、今開けますね』


その言葉と共に小口を除く安野達が玄関の方へ足早と行った。

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