15 初めての生徒会室(3)

「私、春日野町先輩に呼ばれて……」


 同じ顔に挟まれて、おずおずと申し出ると、剣様がにっこりと立ち上がった。


「そうなの。うちのグループを手伝ってくれる朝川よ」


 その時、かぁっと顔が熱くなるのを感じた。

 朝川……って、呼び捨て…………!


 あの透き通ったさらさらと流れる小川のような声で……!

 え!?

 これもう付き合ってるって事でいい!?合ってる!?


「よ……っ、よよよよよよよろしくお願いします朝川です」


「よろしく」


 目の前の東堂先輩がにっこりと笑う。

 にっこりと笑うのは同じでも、剣様の笑顔がバラの方が恥ずかしがって花びらを散らしてしまうような笑顔なら、東堂先輩の笑顔は気温が3度ほど下がってしまいそうな笑顔。

 クールビューティーだ。


 後ろの東堂先輩もにっこりと笑う。

 おおお、こっちも。


 剣様が、髪をなびかせつつ、スチャっと立つ。

 私よりも10センチほど背が高いのがよくわかる。

 モデルよりモデル!

 部屋の中だっていうのに、爽やかな風が吹く。


「ここは生徒会室。生徒会は会長選の立候補者が2人になってしまったから、グループも2つに分かれてしまったの。あっちのグループは別に教室をもらったから、うちはここを使わせてもらってるわ」


 自己紹介の為に、東堂先輩達が前に並んでくれる。

 よく見たら、右のサイドテールと左のサイドテールだ。サイドテールを挟んで、同じ顔が並ぶ。

 右のサイドテールの東堂先輩が、

「私は東堂杜若かきつばた

 と自己紹介をすれば、左のサイドテールの東堂先輩が、

「私は東堂菖蒲あやめ

 と自己紹介をした。


 その後ろから、男子生徒が顔を出した。

 色素の薄い髪の毛をオールバックに撫でつけ、眼鏡をかけている。

 真面目というか、ガリ勉風というか。そういうファッションにも見えるようなスタイルだ。


 その男子生徒が、プライドが高そうな顔で、眼鏡をクイっと押し上げた。


「僕は、小節こぶし龍樹たつき


 やはり2年の小節先輩だ。


「今は、この4人でやっているの」

 と、剣様が紹介してくれる。

 アクが強い3人だな……。


「少し手が足りなくて。朝川には、雑用なんかをやってもらう事になるんだけれど、いいかしら?」

 剣様の高圧的な声。

『いいかしら?』なんて言いつつ、反論は認められそうにない。


「もちろんです!」

 まるで、軍隊かのような返事を返した。


「じゃあ、まずこの報告書、清書してくれる?」

 と出されたのは、ノート5冊分の活動日誌のようなものだ。

「はい、もちろん!」


「この報告書がこれまでの実績の裏付けになるから、心惹かれるような報告書にするのよ!」

「はい!先輩!」

「全てではなくていいけど、2日でまとめて!」

「はい!先輩!」

 剣様の手伝いができる事で、ウキウキしながら作業机に着く。


 その日から、放課後には、生徒会室に通う毎日が始まった。




◇◇◇◇◇




そんなわけで、キャラが濃い5人組の誕生です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る