外伝・この世は往々にして理不尽であった


 天神 喰臥は彼に協力をする為に政治家の道を歩み始めた。

 一時期ではあるもののメディアに露出し絶大な人気を誇っていた天神は才溢れる話術を巧みに利用してあっという間に選挙に当選して政治家となった。

 そうして政治家となった天神は気が付いてしまった。今の政治がどれだけ腐っているのかを・・・それでも自分や彼含めこの国を本気で良くしようと努力をする同士達はいた。

 特に自分に生きる希望をもたらしてくれた彼は前を向いて努力をしていた。

 天神は彼の為にも腐らずに努力をし続けた。

 彼も同士達も協力してくれた。

 天神は天才であった。


 だけど天神は一人の人間に過ぎなかった。

 同士はいた、いたがしかし、大きな力はなかった。


 どれだけ良い政策を立案しても、どれだけこの国に足りていない物を補おうとしても、どれだけ国民の為を考えて行動しても、利権関係にがんじがらめになった愚物によって潰されてしまった。

 天神は裏で泣いている彼を見てしまった。

 自分の努力が否定され、真に国を良くしようとしているのにそれが出来ない今の現状に自分の力の足りなさとこの国の腐り過ぎてしまった現状に心を痛めて泣いていた。

 天神は初めて彼の涙を見た。

 自分の命の恩人である彼の涙を見た天神は本気で憤った。

 

 天神は天才であった。

 天才であったが為に愚かでもあった。

 憤る気持ちのまま行動を起こした。

 行動を起こした結果、自分たちの邪魔をする売国奴がとある宗教団体と繋がって不正に票を確保している証拠。

 政策の結果としてとある企業に都合が良い形に無理やり添わせて本来は貰ってはいけないキックバックを貰っている証拠。

 政治資金を不正に利用している証拠。

 特定の団体と繋がっている証拠。

 特定の国の繋がり、その国が利益となるように行動をしている証拠等々。


 本来は徹底的に隠され暴くのが難しいような証拠を集めてしまった。集めれてしまった。

 そしてそれを彼と共有して話し合いの末に自分ではなく彼の方から世間に公表されて彼を英雄にさせようとした。

 彼は天神の手柄を奪う真似はしたくないと断ったが、自分よりもこの国を真に変えられるのは彼だと熱心に説得して半ば無理やり証拠を押し付けて公表させた。

 これで次の日には数多の報道機関がこの事件について触れ、彼が英雄となり揺るぎない支持基盤と名誉を獲得してくれると信じて疑わなかった。


 





 次の日、彼のありもしない不正の証拠が報道された。

 全ての局で報道され、数多のコメンテーターが彼を責めた。

 SNSを見れば恐ろしい数の誹謗中傷で溢れた。

 そして天神は思い出した自分の両親の会社を潰し自殺にまで追いやった人間の果てしない悪意を。


 だけど彼はそんなに弱い人間ではなかった。

 自分は無実だと訴え続けてテレビにも積極的に出演して自分の無実を訴え続けた。

 天神も全力でそれに協力した。

 少しずつ、世論に変化が訪れ、不正として表示された証拠の矛盾点も指摘され始めた。

 粘り勝ちであった。

 この調子で行けば、きっと世間も彼を認めてくれる。天神も彼も喜び久しぶりに酒を飲み交わした。


 次の日。


 同士の一人が何故か首を吊って自殺し、遺書には彼が不正を行いその隠蔽工作の手伝いをしたというありもしない嘘が書かれていた。

 

 世論は一瞬にして牙を剥いた。


 天神は件の自殺が明らかに他殺であると現場の情報を調べ確信を持てていたが、その言葉を世論は信じてくれなかった。

 それでもきっと今まで見たいに粘り続ければと、彼に訴えた。


 しかしながら彼の心は折れてしまっていた。。

 彼は心優しい人間であった。

 だからこそ同士の一人が自分のせいで殺されたことにショックを受けて、自分を責め続けた。


 天神は彼を励ましたけど、言葉は届かなかった。


 ・・・・・・


 天神は一人でも戦った。

 幸いなことに天神と彼を慕いついてくる同士はいた。

 信じてくれる人もいた。


 戦って戦って戦い続けた。


 ・・・・・・・・・


 それでも世論は牙を向き続けた。地獄のような嫌がらせと責め苦が続いた。


 そしてとある日・・・彼が自殺した。


 天神の中にある何かが音を立てて崩れるのが聞こえた。





―――――――――――――――


 因みにこの作品の時代設定としては詳細には決めていないのですが、この過去編軸においては大体現代に近いものと思ってください。

 そんでもって現代の時間軸あたりでダンジョンが出現。

 ダンジョン出現から50年後はこの作品の舞台になっているのですが、化学技術等はダンジョン出現による混乱と天神が敢えて大量殺戮兵器を生み出さない様に調整をしていたのでそこまで発展していないって感じです。

 あくまでそこまでなので、ちょくちょくそれなりに優れた化学技術は出します。

 とはいえでタイムマシーンみたいな世界観壊すものはなく、VRゲームや超小型の自立型スマホ機能搭載ドローン程度です。

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