第38話 企業案件⑤温かいお話

「ということで再開だ!」


:おかえり~

:案外早かったw

:今は沖田くん? 沖田さん?

:同一人物だからwww


「悪い悪い。ちょっとキャラ作り維持できなかった。ここからまた戻るよ」


:沖田きゅ~~~ん♡♡♡

:いや、たしかに可愛らしい顔してるけど、世界最強だからな?

:で? 結局エグルスって誰なん?

:ドキドキ……♡

:ソワソワ……♡

:なんでお前らが緊張してんだよwww

:どうでもいいかもしれないけど、同接4万人かつ"遥Love"チャンネル"ツブヤイターのトレンド7位だからな?

:そっちかよwwww

:もっと"沖田くん"頑張れよ!

:でもすげ~~~

:おめwwww


「ほんとだ。ありがとう!」


:収益化さえできていれば今スパチャの嵐なのに~~~

:投げさせて! 沖田くんは私が養うんだ♡

:悪いが遥さんには勝てねぇぞ? なにせ"遥Love"チャンネルだからな!

:くっ

:話が進まんけど、エグルスって?


「エグルスは父親だな」

「はっ?」


:えっ?

:まじ?

葉月:やっぱり。昔、乱雪さんと組んでいたからそうだと思ってました。

:おぉぉぉおおぉぉおおおおお!!!!!

:なるほど。それを沖田さんは知らずに使っていたということか?


:それは不意打ちすぎるかも

:大事に使ってた叔父さんから貰ったお母さんの遺品が、実はお父さん作って、なんかステキね

:ステキというか愛を感じるわ(涙)

:温かいお話ね♡

:だから泣いたんだろ。いい話や(涙)

:もらい泣きしてるやん


「みんなもありがと。そう、びっくりした。でも、もう大丈夫だから」

たぶんこういうところで確かテレビで見た"あざとく"ってのを意識すればいいのかな?


:泣いていいんやで?(オレの胸で)

:いつでも泣かしてあげるわよ?(私の胸で)

:遥さんもいるし、間に合ってるだろwwwww

:エフィーちゃんもいるしな

:えっ?


エフィーの胸なんてほぼないぜ?

そもそもあいつ普段は手のひらサイズだし……。たまに大きくなってるように見えるのが意味わからんけども。


「素晴らしい家族愛ですね。沖田さんに使ってもらって、お父さんも喜んでいるのでは?」

「ありがとうございます。見てもらってよかったです」


:それはそうだよな。

:嬉しい事実だったな。

:KIJ、グッジョブだな

:でも品質問題が……

:うるせぇよ! 関係ねぇだろ! ぶっとばすぞ?

:ほんとだよ。空気読めよ。

:幸せの連鎖を邪魔しないで!

:私はKIJを応援するわ。沖田くんのあの嬉しそうな表情。あれを引き出してくれただけで表彰ものよ!


「そう言ってもらえてありがたいですが、結局性能や素材に関しては分析できませんでしたので、引き続き装置の改良に勤めます。それでは次に移る前に少し休憩を入れさせてください。準備をしますので」

俺を気遣ってか、日比野さんは進行しながらもう一度休憩を入れてくれた。


休憩時間、椅子に座ってさっきのドリンクをもう一本貰って飲んでいた俺に白衣を着た人が近寄ってきた。



「すみません、製作者様がもしかしたら沖田様と関係の深い方なのかもしれないという想定ができていませんでした。謝罪いたします」

「いや、俺も予想外でしたから。そんなに謝らないでください。俺はわかったことに感謝していますので」

「ありがとうございます。それで、配信を止めている間にもう1つだけ伝えさせてください。実はこの刀の素材だけはわかったのですが、公開するにはインパクトが強すぎると思っておりまして」

わざわざ申し出て謝罪までしてくれて、丁寧な人だな。

問題は起こしたのかもしれないけどこういう会社になら就職してみたいな。上司が葛野だった頃の日本ダンジョン協会とは雲泥の差だ。

それにしても、インパクトが強すぎる素材ってなんだ……?


「この刀の素材は"オリハルコン"と表示されています。それが実際どんな特徴を持った金属なのか、我々にはわからないのですが……」

「えっ? あの伝説の?」

「そうですね。オリハルコンという素材は伝承でしか聞いたことがありませんね」

衝撃の事実、第2弾だった。

本当に今日来てよかった。あとで遥や横田さんに自慢しよう。


そう言えば、ちょうどいい機会かもしれない……。


「ちなみに1個お願いなんですが、これを鑑定してもらうことはできますか?」

「これは?」

俺は以前、手に入れた意味不明な猪摸蘭魔とか言う名前の像を渡した。


「変質した東京ダンジョンで手に入れたんだけど、何かよくわからなくて」

「なるほど。了解しました。鑑定できるかやってみます」

白衣の人は引き受けてくれた。どうやら3つ目のタスクが終わって帰る際に結果を教えてくれるとのことだった。よろしくお願いします。




「それでは沖田さん、配信を再開していきましょうか?」

「わかりました」

俺は浮遊カメラを起動する。


:おっ、待ってました!

:全裸待機!

:なつかしいなwwwww

:いよいよダンジョン探索だよね!?


「はい、お待ちかねのダンジョン探索の時間ですが、まずは使って頂く魔法剣の説明をさせてください」


:よし聞こう。

:もちろん聞くぜ!

:ほら、全裸待機しなさいよ!?

:えぇ???

:よし、うっと~しいクレーマーが消えたな

:あいつのID控えてさっきの休憩中に通報しといたわ

:さすができるお姉様ステキ♡


「今回使って頂くのはこちらです。KIJ制作のコードネーム"スサノオ"です」

「おぉ、カッコいい!」


:おぉ〜さすがKIJだな。

:ほんとだ。ここ数年はなんかデザインを削ぎ落したスタイリッシュな路線だったけど、やっぱ中二病全開のこんなデザインこそKIJだぜ!

:沖田くんも目が輝いてるな!

:見るだけで欲しくなる洗練されたデザインの中二病感がいいよな!


コメント欄で言われてる通り、見た目が凄くカッコいい……。ぶっちゃけ一本欲しい……。


「コメント欄の高評価が凄いな♪」

「本当ですか?それはまた制作陣と開発部門と、デザイン部門もみんな大喜びしますよ!」


俺はこの剣を預かってルンルン気分で皇居ダンジョンに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る