第34話 企業案件①

世間は冬休みの真っただ中!

俺はなんと日本有数の巨大企業であるKIJにやってきた。

ここはダンジョン探索者のための武器や防具、様々なアイテムを開発、製造している。


D7の中ではダンジョン探索に比較的後ろ向きな日本ではあるが、それは政府のスタンスであって、民間では探索者たちと協力して様々なものが研究・開発され、実用化され、流通している。KIJはそのトップを走る会社だ。


ダンジョン産の素材やアイテムには目玉が飛び出るような価格がついていたりするし、それらを買い付けて加工して売るときはより高値がついてるものだから、売上も利益も相当なもので、短期間で日本トップクラスに躍り出た企業さんなんだよ。(by 夢乃さん)


……そんな会社は知らないって言ったら頭叩かれたのは内緒だ……。


「こんにちは。広報の日比野様からのご依頼で伺った沖田紘一です」

俺はKIJの本社の大きな建物に入って受付で挨拶する。

受付には2人の女性がいて、俺を迎えてくれた。


あまりこういう経験がないので、念のため丁寧な対応を心掛けている俺ってかっこいいだろ?

仕事として受けたからにはちゃんとやるから、安心してほしい。


「ようこそKIJへ。お待ちしておりました、沖田紘一様。日比野が参りますので、どうぞそちらのソファーにかけてお待ちください」

完璧な営業スマイルでの対応だった。

さすがは大企業。


ダンジョン探索者用の武器や防具やアイテム開発って聞いて、もっと荒くれた鍛冶屋みたいなのを想像してたんだけど、普通の企業って感じだ。むしろ床は大理石が敷き詰められ、白を基調としたエントランスに例えば筋骨隆々の鎧を着たおっさんが立っていたりしたら違和感がはんぱないまである。


「ありがとうございます」

俺はアホなことを考えながらも、受付のお姉さんにお礼を言ってからソファーに腰掛けた。


「どうぞ」

そこに狙ったようなタイミングでお茶が出てくる。ちょっと驚いてお礼の言葉が出てこなかったのは内緒だ……。

そして、お茶を飲みながら少し待っていると、奥の自動ドアが開いてパリッとしたスーツを着た背の高い細身の男性がやってきた。


「お待たせしました、沖田さん。広報の日比野です。今日はご依頼を引き受けていただきありがとうございます」

その男性は俺の前までやってきて丁寧にお辞儀をして自己紹介してくれた。


「こちらこそ、お誘いありがとうございます」

俺もお礼を返してから、日比野さんについて行き、会議室に入れてもらった。


「どうぞそちらへお座りください。飲み物はなにがいいですか? コーヒー、紅茶。あとはコーラとかのジュースもあります」

「ありがとうございます。それではコーラを」

俺はありがたくコーラをお願いした。知ってるかもしれないが、大好きなんだ。



「では、今回お願いしたいことを説明させてもらいますね」

「はい、お願いします」

一応事前に聞いていたけど、改めて説明してもらう。


今日の依頼は3つ。

1つ目はKIJの新製品である魔法剣の試験運用、2つ目は同じくKIJの新製品である特殊回復薬の試飲、3つ目は俺の刀を見させてほしいとのことだ。

ちなみに今日ここに来ているのは俺だけだ。


横田さんと遥は別の用事があるとのことだ。くっくっく。配信を俺一人に任せていいんだな?


まぁ、真面目にやるけどな。

一番気になる魔法剣の試験運用はその名の通りで、すぐ近くにある皇居ダンジョンで試し切りしてほしいとのこと。

このダンジョンは久しぶりだな。


まだ自分を鍛えているころに何度か入ったけど、上層はトレント系が多く、中層・下層に行くにつれて固い植物系、石や金属なんかの物質系のモンスターが増えていく構造だったから、剣の試し切りには持ってこいだね。


なんかどうやってこの範囲に収まってるんだろうかと不思議に思うくらいずっと斜めに同じ方向に下っていく構造なのを思い出すが、これはどうでもいい。


日比野さんと相談した結果、配信は最初から最後までOKということだったから、一気にやってしまおうということで、試飲→刀の分析→皇居ダンジョンで試し斬りという流れになった。取れ高とか流れとか気にしてないからな、あっはっはっはっは。



「それでは沖田様。電話でもお話しましたが、KIJは半年前に製品の品質問題を出していまして、そのことに対する批判があるかもしれません。冒頭で説明をさせて頂きますので、よろしくお願いします。」

これももちろん事前に聞いてたからOKだよ。


KIJはここ数年で、複数の会社を買収してさらに大きくなったんだけど、管理が至らない部分があって、武器や防具の耐久性が低いものがあったとか、アイテムで効果が薄いものが混じっていたとか、問題が起きたらしい。


眉を潜めながら話してくれる日比野さんは真摯な人だなと思った。

一応詳し目に説明を聞いたんだが、それくらい良くね? としか思えなかったんだが、企業としては約束しているスペックに届かないものを売っていたんだから、謝罪案件なんだろう。


今は信頼回復の真っ最中ってことで、その一環で新製品の発売に際して俺を呼んでくれたらしいから、俺もしっかり配信していくとしよう。


なにせこういうのは信頼が大事ってことくらい、俺でもわかるしな。




「ということで、配信だな。

 『遥Loveチャンネル』を始めるぜ!」

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