世界を救うためのダンジョン探索から帰ってきたら恋人は寝取られ、探索失敗の責任を押し付けられたからブチ切れて日本最強パーティから脱退したら、あいつら勝手に自滅していった
第27話 ここで、世界のニュースをお伝えします
第27話 ここで、世界のニュースをお伝えします
□世界ダンジョン協会本部 (フローレンス・リーヴェルト会長)
「リーヴェルト会長。報告します。世界各地の高位ダンジョンで異変が起こっているようです」
ここはグレート・リフト・バレーの中央深部に設置された『世界ダンジョン協会』の本部だ。
なぜアフリカ東部のグレート・リフト・バレーに配置されているのかと言うと、今のダンジョン時代の根源となった高位ダンジョンを指し示していると言われる石板があったのがこの地だったからだ。
言い伝えによると100年も昔からこの地に置かれていたというが、誰が置いたのかはわからないし、現代の技術をもってしても動かすことができない。
いや、詳しく言うと、持ち運ぶことはできるが、なぜかグレート・リフト・バレーの外に持ち出すと石板は消え、元の位置に戻ってしまうのだった。
不気味な石板と呼ばれて現地の人たちは触らないようになっていったという。
しかしある時、世界にダンジョンが現れた。世界中が混乱する中でこの石板が明るく輝いていることも伝えられた。
きっと何か関係がある。そう思ったものたちが石板を掲げ、彼らが設立したダンジョン協会はこの地を神秘の場所として石板を取り囲むように本部の建物を建設したのだ。
その建物の中で、現会長のフローレンス・リーヴェルトはD7との情報のやり取りを担っている部下からの報告を聞いていた。
「異変というのは?」
「はい、もともと各地のダンジョンで出現するモンスター種にはそれぞれの傾向があることはご存じかと思います。あるダンジョンではスライム系が多いとか、あるダンジョンでは獣系が多いとか。高位ダンジョンも例に漏れず、明らかな傾向がありました。それ突然、ほぼ同じタイミングで変化しているようなのです」
「ほう……」
部下の報告の意味は分かったが、原因や理由はわからない。リーヴェルトは部下に報告の続きを促すように、視線を向けて頷いた。
「具体的には、アメリカでは可愛らしい妖精が溢れ、ドイツでは恐ろしい悪魔が飛び回り、オーストラリアでは石像が闊歩し、なんと中国ではモンスターが消えました。ブラジルとインドとは通信環境が悪くて音声が不明瞭なのですが、何らかの変化が起きているようです」
「種類が変わったのはまだしも、消えた? 原因はわからないか?」
「はい。明確には……」
「予想はしていると?」
「はい、日本最強の探索者である沖田紘一氏がパーティーを率いて東京ダンジョンの100層ボスを倒したタイミングが近しいため、それではないかと」
「石板でも1つの石が青に変わっていたな。中国の黒とは違って」
「その通りです。東京ダンジョンにはまだ先がありましたが……」
「予想としては弱い気はするな……。ただ、石板の配置から見ると、日本は上位ダンジョンだ。他のD7と違ってな。トリガーになる可能性はあるだろう。調査を続けてくれ」
「はい」
部下は姿勢を正して退出する。
リーヴェルトは考え込む。中国の時には何も起こらず、日本の時には世界中で反応があった。
その理由はなんだ。
石板には合計13個の石が埋まっている。石板の上部に7つ。下部に6つだ。
それぞれが高位ダンジョンを指し示していると思われる。
現在、明確に発見されている高位ダンジョンは7か所だ。だから我々は石板に埋まっている石の数を明確に公表していない。
各国の変なプライドにダンジョン攻略が邪魔されてはいけないからだ。
これは神の意思。
そんな中で、中国が北京ダンジョンを攻略した時には下部にある石の一つが黒色になった。
これで高位ダンジョンを示していることは間違いないと言われた。
次に日本が東京ダンジョンを攻略した時には、上部にある石の一つが青色になった。
日本ダンジョン協会の神谷会長には調査させてもらう旨を伝え、さらに明らかに最強の探索者である沖田君には太平洋ダンジョンへの挑戦を依頼した。
彼がもし太平洋ダンジョンの100層をクリアすれば……その結果、石板にある石の一つが色を変えれば色んなことがわかるかもしれない。
リーヴェルトがそんなことを考えていると、退室しようとした部下が振り返り、『そう言えば』と呟く。
リーヴェルトは再び彼女に視線を向けると彼女はもう一つの情報を話した。
「世界中でスタンピードが増えているという情報があり、調べていますが、確かに増えているようです」
「その理由も……」
「不明です」
「わかった。引き続き調査と整理を頼む」
□東京 (沖田紘一)
『探索者の方はくれぐれも注意を払って頂けますようお願いいたします……』
テレビの中ではほとんどテレビを見ない俺でも一応名前を知っているアナウンサーが注意喚起を口にしている。
太平洋ダンジョンの探索中に、なんで太平洋なのに水棲モンスターじゃなくて鋼の虫系なんだよってずっと思ってたけど、どうやら世界各地のダンジョンで出現するモンスター種別がおかしなことになっているらしい。
それは東京も同じで、通常のダンジョンではボスとかでしか見かけないドラゴンがうじゃうじゃいたのに、なぜか牛さんパラダイスになってるらしい。
つまりオークとかタウロス系だな。聞いただけだとドラゴンより牛さんの方がよっぽど楽そうだけどな……
そしてドロップする肉が美味そうだ……。
ドラゴンは筋張っていて固いから食いづらいし、あんまりおいしくないやつばっかなんだ。
そろそろ晩飯でも食うかな。
1人で喰いに行くのも面倒だし、遥が作り過ぎたカレーが余ってたっけな……。
そんなことを考えながら、テレビを消そうとしたが、急に画面の中が慌ただしくなりアナウンサーに紙が手渡された。
どうしたんだろう?
芸能人でも亡くなったのかな?
と思ったが、違った。
『ここで緊急ニュースです。高位ダンジョンである東京ダンジョン攻略後の調査のために日本を訪れていた世界ダンジョン協会の調査部隊が、東京ダンジョンの中で消息を絶ったようです。東京ダンジョンは一時封鎖されますので……』
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