第11話 未来へ

「ふぅ、準備はいいか?」

「うん!」

「……はい」

『いつでも行けるの!』


俺の問いかけに、全員が力強く答える。


力強いな。


なんと言っても横田さん……いや、那月さんまで声を出してるんだ。



皆川夢乃:頑張ってくださいね!

神谷英二:紘一君。無茶を言ったかもしれないが、君ならできる。頼んだぞ。



日本ダンジョン協会から葛野章人たちが一掃され、あらたに政府顧問でもあった叔父の神谷英二が会長になった。

叔父さんは断ろうとしていたらしいが、俺への影響力を考慮されたらしい。

迷惑かけてばっかりで申し訳ない。



だからこの場に参加してくれてる。


まさかダンジョン協会に応援されて探索に出る日が来るなんて、思いもしなかった。


それも、可愛い恋人……遥と一緒に。


気恥ずかしい気もするが、周囲はみんな好意的だ。

それもこれも遥の人柄がいいからだな。


神官としてどんな相手にも一定の敬意を払って接するし、小っちゃくて緊張しぃだけど、一生懸命やってる姿は可愛らしい。

その顔を優しく包み込むショートボブが特徴的で、髪の毛は柔らかく波打つようなナチュラルなカーブを描き、光が当たると滑らかな艶が美しく反射している。


こんな子が、幼馴染で、かつ俺のことを好きと言ってくれる世界に生まれてよかった。

嫌なこともあったけど、今は楽しい。


残念ながら茜はどこかに行ってしまった。

遥は探す必要はないと言っているが、どうしたものだろうか、とも思う。


まぁ、姉妹での話に足を踏み込むつもりはない。

茜との男女としての関係はちゃんと終わらせているしな。



「では行こう」

そう言って俺はダンジョンに降り立った。

みんなついて来てくれる。


やるからには本気だ。

全力で仲間にもバフを掛けて進む。


でてきたやつは、黒騎士だろうが、グリフォンだろうが、ドラゴンだろうが粉砕して進む。

案の定、70層からモンスターが増えるが、そんなことは気にしない。

全部蹴散らす。


エフィーは予想外に強かった。

那月さんは固く、基本に忠実だった。

遥は可愛い……とかここで言ったら耳を真っ赤にして殴られそうだから言わないが、効果的に仲間に支援魔法と回復魔法をかけていく。


俺は前衛司令官として切り込みつつ指示を出す。


80層は余裕で突破した。



90層も苦もなかった。



95層を超えると、やはりきつい。

可能な限り支援魔法をかけ、慎重に進んでいく。


98層では、逆に侵入と同時に殲滅魔法をぶっ放し、混乱したところに斬り込んだ。

一緒に走る2人と1匹が綺麗だった。

 

99層は一切の光がない世界だったが、魔力による探知を最大限にあげて、くっつきながら周囲を警戒して進んだ。

3方向からいい匂いがしたとか言ったら怒られるから言わない。


100層で出てきたのはエンシェントドラゴンだった。

まごうことなき強敵であり、100層ボスに相応しい威容を誇るモンスターだった。


だが、俺たちを見るなりプライドをかなぐり捨てて襲い掛かってきた。

竜だからプライドが高いと油断した俺が悪かった。


遥がなんとかマジックシールドを30枚も張ってくれたおかげでかすり傷程度で済んだが、俺は怒ってしまった。

遥に傷つけやがったな?


つい全力で魔力を込めたオリジナル魔法・愚王の行進レクスストゥルトゥスインスティウムとか唱えてしまった。

魔力が次々に人型を取り、エンシェントドラゴンに突っ込んで行った。


せっかくの高位モンスターだったが跡形もなく消し飛んでしまった。


配信していたから大活況だったが、帰ってから叔父さんに怒られた。

というか拗ねられた。


せっかくの研究素材だったのにと。



そんな形で俺は……俺たちは東京ダンジョンの100層を攻略した。

世界ダンジョン協会が保有している石板の中の1か所が青く変色したらしいからちゃんと攻略されているはずだ。


ただ、黒ではなかった。

中国のダンジョンが攻略された時には1か所が黒くなったから、全部そうなんだと思っていたのに。


どう考えてもこれで終わりじゃないっぽい。

100層から先に続く階段もあったし、まだまだ探索は終わらない。


人類的には危機が続くわけで、東京ダンジョン100層攻略のお祝いモードに水を差してしまうことになるが、事実は公表した方がいいということで公表された。


俺たちの次の目標は101層の先へ進むことになった。




「遥。お疲れ様」

「おにい……紘一さん。お疲れ様」

遥は恋人になってからも昔の癖でお兄ちゃんと呼ぶことが多い。

この前酒に酔ったときに、可愛いよな~って言いまくったら拗ねてしまって、これからは紘一さんって呼ぶと言い張られてしまった。


反応全てが可愛いし、声を聞くだけで幸せな気分になるから何の問題もない。



今爆発しろとか思ったやつ、前に出ろ。

俺もこんな話聞いたら思うだろうけどな。



「紘一さん」

遥が体をそっと寄せてくる。

俺はそれを抱きしめ、キスをする。


幼馴染で、まだ残念ながら大人な感じではない俺たちに取っては不釣り合いな大人のキス。


幸せすぎて脳が溶けそうだ。


あまりの甘さに、そのまま遥を優しくベッドに転がす。


なされるがままに身を委ねてくれる遥が愛おしい。





翌朝、休む間もなかったと可愛らしく怒られたのは内緒だ。

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