第12話注意ばあさん
ばあさんは外出した。
少し認知症気味だ。
買い物に出掛けると必ず、若者を注意するから、「注意ばあさん」と呼ばれていた。
太った中年男性に、
「あなたっ!太り過ぎよ!このままだと、死ぬわよ!運動しなさい!」
「……」
または、高校生カップルに、
「あなた達!まだ、学生でしょ?何考えてるの?手なんか繋いで!」
「うるせぇよ!クソババア」
「なんですって!あなた、頭も悪いのね」
「……」
「ねぇ、まー君。この人、ボケてるから怖い。あっち行こうよ」
「あぁ」
まぁ、こんな具合だ。
はあさんは厳しい家庭に育った。
また、高飛車な性格がそのまま老人になったので、たちが悪い。
自分は正しい行いをしていると自信を持っていたが、近所では有名で、誰もがこのばあさんを避けていた。
杖をつきながら、次の獲物を探していた。
「あんた、サングラスして恥ずかしくないの?」
「私のことですか?」
と、ばあさんにサングラスの中年男は言った。
「おばあさん、あなたは間もなくに死にます」
「何、ふざけた事を言ってるの?はやく、サングラスを外しなさい。柄が悪い!」
「私は忙しいのででは」
「逃げないでよ……ハグッ…」
ばあさんは胸に手を当てながら苦しみ始めた。
周りは誰も気にしていない。
「そ、そこのあんた」
「……」
「胸が苦しいの、救急車呼んで!」
「オレには、死ぬよ!と言ったババアだよな?勝手に苦しめ」
と、太った中年男性は去って行った。
「そこの君たち、このおばあちゃんを助けて!」
「昨日のクソババアだな?助ける?」
「む、胸が苦しいのよ!助けて」
「やだね」
周りは相手しなかった。
町中の人間が、誰かが救急車呼ぶだろう。このばあさんは自業自得だ!と、思われていた。
30分後。
ばあさんは、うずくまり動かなくなった。
誰かが、救急車を呼んだらしい。
しかし、時既に遅し。
ばあさんは、死んでいた。
「注意ばあさん」終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます