第12話 喪失

右手から赤い風船が離れていったあの瞬間を、大人になった今でも覚えている。私のものだった風船が私のものではなくなり、遥か遠くへ飛んでいく。飛べない私は置いてけぼり。じっと見つめているしかなかった。もう一度戻ってきてほしい。あなたを失った悲しみをまだ埋められない。胸が痛くて堪らない。

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