第370話 とんぼ返り
善は急げということで、俺たちは来た道をさっさと引き返した。
「せっかくダンジョンに潜れるっていうことでしたのに」
武闘会まで開いてダンジョンアタック参加権をもぎ取った公爵夫人はぶすくれている。いつも穏やかに微笑み、顔色ひとつ変えない夫人が珍しいことだ。
「まあそう言うなエディ。ファビアン殿はダンジョン管理に秀でた第一人者、必ずや心躍るダンジョンに導いてくださるだろう。なあクラウス」
夫人とは対照的にハイテンションな公爵。いつもはキリリと唇を引き結び、一切の無駄口を聞かない貴公子であらせられるのだが、アラフォーにして少年のようにはしゃいでいらっしゃる。やはりお爺様の血か。俺は黙ってミスリルゴーレムのモニターに注視した。ダンジョンはさっき潜ったじゃないか、おっきいヤツ。巨大エルフの巣だったけど。
その巨大エルフことファビアン氏は、木製の巨大な車椅子に乗り換えてミスリルゴーレムに乗り込んできた。
「あの金属ダンジョンのゴーレムをテイムしたでござるか! さすがノーム族、いやはや感服でござる!」
「ホホホ」
いやもう王女殿下マジ優秀。目の前で自分の
天才アロイス様が編み出した反重力システムのスピードは半端ない。行きもそうだったが、帰りもすぐだ。俺たちは間もなくフィーレンスの森、世界樹上空の座標に到着した。相変わらず、パッと見はその辺の森と変わらないように見えるんだが。
「やれやれ、気が進まないでござるが――光明の精霊よ、大樹の精霊よ。ここに集い顕現し、その力を示せ。我は大樹の子にしてフィーレンスの一枝。我は大樹、大樹は我。今こそ真の姿をつまびらかにし、我を迎え入れよ」
今はもうフィーレンス一族から抜けたはずのファビアン氏。しかしフェンケ様と同じ詠唱で、世界樹はその姿を表した。フィーレンスは関係ないのか。
「行くでござるか」
ファビアン氏は浮かない表情で、俺に広場への着陸を促した。
ミスリルゴーレムで降り立つ俺たちを取り囲む、フィーレンスのエルフたち。
「あらあらアレクシス、随分早かったじゃない。そちらは?」
「フェンケお祖母様、こちらはデルブリュック公爵夫妻。妻の兄と義姉です」
「お初にお目にかかる。私はデルブリュック公爵、ディートフリートだ」
「妻のエデルガルトですわ」
しかし俺たちを好意的に迎えてくれるエルフは少ない。
「ふん、また人間どもがぞろぞろと押し寄せよって、臭くてかなわん」
「まったく、人間を招き入れるなど正気を疑う」
「そもそもフェンケ姉上が下等な人間などと交わるからこのような失態が」
「やめなさいあなたたち! その人間が世界樹を甦らせる鍵になるかもしれないのよ! 多少臭くても耐えなければ」
「本当のことではないか! 先日の紅蓮の魔女はおらん、なにを恐れることがある!」
紅蓮の魔女とはディートリント様のことだろうか。あの時、もうちょっとでこの森を丸焼けにするとこだったもんな。しかし。
カッ!
「おほほ、失礼。手が滑ってしまいましたわ?」
「「「?!?!?!」」」
エデルガルト様の手にあったはずの扇が、エルフのマントを地面に縫い付けている。しかも一人じゃない、大声で悪口を言っていた男どもが三人ほど尻餅をついている。彼らのマントには
「エディ。君が手を下す必要はないといつもあれほど」
「あら、あなたの手を煩わせるほどでもありませんわ?」
「馬鹿なッ、風の精霊の加護もなくそんなッ」
「あぁら、精霊の加護がなければなんにもできませんの?
「ヒッ……ヒィッ……!」
男たちは血相を変えて逃げ出した。エデルガルト様の言うとおり、紛うことなき雑魚ムーブ。
「ちょっ……あの女は危険なのでは」
「火の精霊を従える魔女よりも危険だとは!」
「精霊眼で捉えられぬ力は、我らにはいかんとも……」
「い、一旦退却して策を練らねば!」
そして残りのエルフのほとんどが逃げ出した。ヤバい、今度は脳筋がものの数分でエルフを制圧してしまった。
✳︎✳︎✳︎
2025.09.20 追記
皆様、いつも読んでくださって本当にありがとうございます!
いつも温かいコメントやご指摘を賜り、厚く御礼申し上げます!
ここのところ全然返信ができておりませんで、大変申し訳ございません。
あとしばらくお時間を頂戴いたしたく!(´;ω;`)
そして当分の間、非常に簡易的なお返事になりますが、どうかご容赦ください。
何度申し上げても足りませんが、拙作の真に面白いところは読者の皆様からのコメントでして、もし読み飛ばしてるよって方がいらしたら、是非ご覧ください。
本編なんかよりずっと面白いので……!(←
重ねまして、読者の皆様には心から感謝申し上げます。
いつもありがとうございます!
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